EMMは次に「UC」を統合する――レコモット東郷CEOが語る

企業がモバイルを安全に活用するために必要なツールを統合的に提供する「EMM」。レコモットの東郷社長は、EMMの次なる進化のポイントは「モバイルユニファイドコミュニケーションだ」と予見する。

電話もチャットも統合――これからEMMはどう進化していくと見ていますか。

東郷 EMMは、MDM、MAM、MCM(モバイルコンテンツ管理)の3つの要素で構成されると一般的に考えられています。moconaviはMDMを選ばない「分離型EMM」なので、MDMベンダーなどの「MDM一体型EMM」と一緒に導入されるケースも非常に多いのですが、今後はEMMの概念自体が再定義されることになるだろうと見ています。

まずMCMは対象範囲も狭く、EMMの概念から外れることになるでしょう。MCMの機能はMAMに吸収されると考えています。一方、EMMの1要素として今後入ってくるのが、ビジネスコミュニケーションの機能です。

3文字略語にすると、例えば、MUC(モバイルユニファイドコミュニケーション)となるでしょうか。

――電話やWeb会議、チャットなどのリアルタイムコミュニケーション機能もEMMに統合されていくと。

東郷 そうです。実際、我々はすでにシスコやNECのIP-PBX、携帯キャリアのスマホ内線サービスなどとの連携を実現しており、アドレス帳や通話履歴などのデータを端末に一切残すことなく、moconaviのアプリから安全に発着信管理などの電話管理ができるようになっています。

さらに9月からはビジネスチャット機能も追加しました。我々がユニークな点は、moconaviのアプリ同士でチャットが行えるだけではなく、Skype for Business(SfB)のクライアントとしても動作予定なことです。

SfBをスマートデバイスで利用する際の課題は、チャットの履歴や添付ファイルのデータが端末に残ってしまうことです。しかし、moconaviをSfBのクライアントとして使えば、端末にデータを残さず、安全に利用できます。シスコのSparkなど、SfB以外のビジネスチャットにも対応していく計画です。

――EMMにUCが統合されていく将来を見越し、先駆けて取り組んでいるわけですね。

東郷 電話やチャットのようなリアルタイムコミュニケーションをEMMに統合していくことは、利便性と管理性の両面で多大なメリットをもたらします。ユーザーはmoconaviだけで必要な業務アプリすべてを安全に利用可能になるし、管理者はmoconaviのアプリを従業員に配布するだけで済むようになるからです。

業務系アプリケーションとリアルタイムコミュニケーションの融合は、実はmoconaviの開発当初からあったコンセプトです。そもそも製品名自体が「Mobile Communication Navigator」の略で、「常に携帯しているモバイルデバイスを使って、いろいろなコミュニケーションをナビゲートしていく」という思いから名付けています。

また、当社は元々フィーチャーフォン向けチャットや音声会議アプリの開発などを行っていた経緯から、音声系の知見を豊富に持っており、これも他のEMMベンダーより先行できている理由として挙げられます。

月刊テレコミュニケーション2016年10月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

東郷剛(とうごう・つよし)氏

国産ソフトウェアベンダでマーケティング職に従事ののち、複数のベンチャー企業立ち上げ携わる。2006年にレコモットを立ち上げ、2008年にモバイルソリューション「moconavi(モコナビ)」をリリース。メガバンクや通信キャリアなど多数の導入実績を有する

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