モバイルや固定回線問わず、トラフィックの増大は止まらない。もちろんデータセンター間相互接続(DCI)も例外ではない。
大容量通信を行うDCIでは、光ファイバー1本あたりの最大伝送容量を向上させることによってトラフィックの伸びに対応するわけだが、年間40%ものペースで増加するトラフィックに対して、光ファイバー自体の物理的な容量拡大は年間平均10%未満に留まるのが実状だ。400Gクラスの光ファイバーは登場しているが、それでもトラフィック増加ペースとのギャップは大きい。
そこで光ファイバー1本あたりの伝送効率を向上させるため、モード分割多重やマルチコア化など様々なアプローチが続けられているが、その代表といえるのがWDM(波長分割多重)である。異なる波長を独立した信号として多重化して伝送することで、光ファイバーの本数を増やさずに容量を拡大できる。ただ、ファーウェイ・ジャパンの小西大介氏は、従来のWDMについて「伝送効率は本来の80%に留まっていました」と指摘する。
ファーウェイ・ジャパン ソリューション スペシャリスト 日本ICTマーケティング&ソリューション営業部 ネットワークソリューション営業部の小西大介氏(左)と、法人ビジネス事業本部 光ネットワークソリューションセールス部 シニアソリューションセールスマネージャーの松居省吾氏
WDMに主に用いられている波長帯は、CバンドとLバンドの2つ。現在の業界標準では、両バンドとも帯域幅は4.8THzずつで、合計9.6THzとなる。ファーウェイでは、Cバンド・Lバンドの帯域を拡張し、6THzずつの計12THzとしたSuper Cバンド・Super Lバンドに対応した光伝送ソリューション(以下、Super C+Lソリューション)を開発している。
DCI向けのWDM伝送デバイス「Huawei OptiXtrans DC908 Pro」。Super C・Lバンドに対応するほか、99.999%という高い信頼性を特徴とする
小西氏は、Super C・Super Lバンドには他の企業も取り組んでいるものの、技術的な課題のため12THz幅の帯域を活かし切れていないと説明する。
ファーウェイがSuper C・Super Lバンドをフル活用したソリューションを展開できている要因の1つは、光ファイバーの信号を増幅させる装置であるEDFA(エルビウム添加光ファイバー増幅器)の性能向上に成功したことだ。「従来のEDFAに新たな添加物を加える研究を繰り返して、最適なパフォーマンスのアンプを開発できました」と小西氏。従来のEDFAでは周波数の両端の増幅に難があったが、ファーウェイはこれを克服し、合計12THzを余さず得られるようになった。
そのほか、各波長を安定させるSRS(誘導ラマン散乱)補正機能の改善や、AIを利用したアルゴリズムのモデリングによる、OSNR(光通信における信号とノイズの比)の最適化も行い、システム全体のパフォーマンスを0.5dB改善させている。
「Super C+Lソリューションは、すでに通信事業者やISPに採用されている成熟したソリューションです」と小西氏は話す。要件の厳しいキャリアで稼働しているソリューションならば、DCIでも活躍するとの自信の表れだ。