AIの発展と実装は、頭脳であるデータセンター(DC)の内部とその周辺に変化をもたらす。
生成AIの開発・学習、そして推論モデルの展開と実行においては、DC、ネットワーク、企業間を膨大なデータトラフィックが行き交う。その成長率が「1年間で倍増する可能性もある」と指摘するのは、米シエナ PLM担当バイスプレジデントのニコラ・ベンベヌーティ氏だ。AIインフラを構築・運用するハイパースケーラーと、拠点間のデータ移動のためのネットワークを提供するサービスプロバイダーは両輪となって、AI社会の基盤インフラを支える役割が期待されている。
米シエナ PLM(Product Line Management)担当バイスプレジデントのニコラ・ベンベヌーティ氏(左)と、日本シエナコミュニケーションズ 執行役員 システムエンジニアリング本部 本部長の今井俊宏氏
ハイパースケーラーが求める次世代の「MOFN」
それには、新たなテクノロジーとビジネスモデルの活用が不可欠だ。シエナは、800Gbpsと1.6Tbps伝送が可能なトランスポンダーや400Gbpsと800Gbpsのコヒーレント・プラガブル、ファイバー容量を倍増させるC&Lバンド光レイヤーを揃えてこのネットワークのスケーラビリティ要求に対応。信頼性の高い電力とスペースの確保も考慮し、最適なソリューションが選べるよう、スペクトラム効率に優れる高性能モジュールと、コスト効果の高いプラガブルの両方の選択肢を提供している。
一方、AIはネットワークへの依存度が極めて高まり、ネットワーク自体も複雑化する。そのため、「ネットワーク監視と自動化の強化も不可欠だ」(同氏)。可視化と自動化のさらなる進展も、通信事業者の課題と言える。
こうした新技術の導入が加速するなか、最も先端的なニーズを持つハイパースケーラーが求める次世代の光ネットワークが北米で具現化しつつある。Managed Optical Fiber Network、「MOFN(モーフン)」だ。
ハイパースケーラーはこれまで通信事業者から一定の帯域幅や波長を借りてネットワークを構築してきた。MOFNでは「サービスプロバイダーがハイパースケーラー向けの専用光ネットワークを構築し、これをマネージドサービスとして提供する。ハイパースケーラーは使用する機器やネットワークの管理方法を決定する発言権を持つ」。専用網とすることで、容量拡大や経路追加等が迅速に行えるようになる(図表1)。
図表1 通信サービスプロバイダー(CSP)が提供するサービス
シエナは、大容量デジタルコヒーレント光伝送技術やオープン光ラインシステム(OLS)やその他の関連技術を駆使して、サービスプロバイダーによるMOFNの設計構築をサポートしている。「ハイパースケーラーは、競合が有しない差別化されたコネクティビティに関心がある。シエナがそれに応えられる独自の立場にあるのは、ハイパースケーラーとも長年にわたり関係を構築してきたシエナだからこそ」とベンベヌーティ氏。ハイパースケーラー・ネットワークにもシエナ製品は導入されているため、「MOFNを構築・提供する際に統合をスムーズに進められる」。