海外に拠点を構えるグローバル企業にとって、国内外の拠点間を安全かつ快適につなぐネットワークを構築できるかは、ビジネスの成功を左右する重要な要素の1つだ。テレワークやクラウドサービスの利用が拡大し、コロナ禍以前に構築された企業WANではそのトラフィックを処理しきれなくなっているなか、逼迫するWANやインターネット帯域への対策は、あらゆる企業の共通課題となっている。
こうした企業の悩みに寄り添っているのが、AT&Tだ。「世界中の多国籍企業のグローバルネットワークを整えてきた経験をもとに、お客様の立場やニーズに沿った支援ができます」と同社の日本法人であるAT&Tジャパン コンサルタントの藤井宏明氏は自信をのぞかせる。
SD-WANで帯域逼迫を回避 セキュリティの強化・均一化も実現
AT&Tの力を借りながら業務改革に取り組む1社が、大日本セルロイドを発祥とする大手素材メーカーのダイセルだ。グループ全体で欧米や中国など14カ国に計75社の拠点を構え、海外売上比率は約65%に及ぶ。
同社は長年、拠点間のネットワークを別の通信事業者の閉域網で運用してきたが、いくつかの課題が顕在化。「グループ全体でのオンプレ型コミュニケーション基盤からMicrosoft 365への移行や、オンライン会議の普及によってトラフィックが増加し、インターネット回線の帯域が慢性的に不足していました」とデジタル戦略推進センター システムグループ 主席部員の大東正和氏は語る。
各拠点のセキュリティ対策は、オンプレミス型のファイアウォールを用いた個別管理。ダイセルの国内外拠点でもテレワークやクラウド利用が浸透し、自宅や外出先からのクラウドへのアクセスが増えてきたというが、こうした環境下において、従来の境界型防御ではサイバー脅威への対処は難しくなる。
また、ダイセルでは国内に設置したVPNサーバーでグループ全体をカバーしていたが、「海外から国内のVPNを利用すると遅延が発生してしまうので、各拠点で自前のVPN導入を許可せざるを得なくなりました。結果、セキュリティレベルが不均一になっていました」と大東氏。これらが重なり、国内外の拠点で軽微なセキュリティインシデントが散発していたそうだ。
こうした問題を解決するため、ダイセルはBroadcomのSD-WANサービス「VMware SD-WAN by VeloCloud」と、ゼットスケーラーのクラウド型SWG(Secure Web Gateway)、リモートアクセスを採用し、国内外拠点へ展開。機器調達から導入、運用・保守までをAT&Tが伴走している。これにより、グループ全体のネットワーク運用の効率化とセキュリティ対策レベルの向上・均一化を実現させた。
ダイセルがAT&Tをパートナーとして選んだのは、数々のグローバル企業を支援してきた実績があったからだ。「抜本的な帯域拡張とセキュリティ強化・統一化を、どれだけ早く確実に実現できるかが最も重要な選定ポイントでした。欧米や中国では、各国の規制に準拠したネットワーク設計が必要でしたが、AT&Tが持つ独自のグローバルリソースにより、期待以上の早期立ち上げを実現することができました」と大東氏は太鼓判を押す。
図表1 Microsoft Entra IDを使った認証強化とクラウドでの集中管理
また、複数拠点からの問い合わせ等を一括管理するヘルプデスクや、AT&Tジャパンによる“顔の見える”フォロー体制、SD-WANやセキュリティに造詣の深い専門家によるサポートが受けられることも決め手になったという。
SD-WANサービス導入後、国内外の拠点からは多くの反響が寄せられていると同グループの桑原克弥氏は話す。従来のインターネット環境下では、Web会議を行うと「音飛びや画面のフリーズが起こる」との苦情が多発していたが、こうしたクレームがなくなったという。「システム部門や現業部門からも、クラウドへのアクセスやデータのやり取りがスムーズになったとのフィードバックをもらっています」
ダイセルは今後、AT&T協力のもと、LANの設計から運用・保守までを一括でサポートする「マネージドLANサービス」を海外拠点へ実装することも検討中だという。「マネージドインターネットやマルチクラウド対応など、グローバルネットワークの整備をご検討の際にも、是非我々にお声がけをいただきたい」とAT&Tの藤井氏は意気込む。