2020年――。東京オリンピックが開催されるこの年は、日本にとって重要なマイルストーンになることが間違いない。そこで今、2020年をターゲットにした動きが様々な領域で加速しているが、企業ネットワークも例外ではない。
企業のネットワーク担当者は、2020年に向かって、一体どんなアクションをしていくべきなのか。
「変革期の企業ネットワークと2020年に向けた動向」と題して行われた、野村総合研究所(NRI) 主席コンサルタント ICT・メディア産業コンサルティング部長の桑津浩太郎氏による基調講演の概要をレポートする。
野村総合研究所 主席コンサルタント ICT・メディア産業コンサルティング部長 桑津浩太郎氏 |
「電話の使い方が劇的に変わっていることを前提に」
桑津氏が企業ネットワークにおける見逃せない変化として指摘した点の1つは、「電話」である。NTT東西は、2020年頃からPSTNのIP網へのマイグレーションを開始し、2025年頃に完了する計画を発表しており、「固定電話は今ちょうど2020年に向けて変革期にある」。
ただ、桑津氏が強調したのは、こうした技術的な変化についてではない。むしろ固定電話の利用スタイルの変化のほうだ。
図表1 若者世代における固定電話の利用感の変化 |
桑津氏によると、最近、新入社員として企業に入ってくる若者は、「知らない人からかかってくる電話は、なんだか怖い」「会ったことがない人に、いきなり電話をするのはハードルが高い」「他人が触った受話器には触れたくない」など、従来世代とは電話に対する捉え方が大きく違っているという。
「携帯電話が爆発的に普及したのは1995年から。つまり、携帯電話が本格普及してから19年が経ったわけで、その当時3~4歳だった子供が今、新入社員として入社してきている。彼らにとっては、たまにかかってくるとコールセンターなどからのセールス電話というのが固定電話。『知らない番号の電話は取ってはいけない』と親から教育されてきた子供が今、サラリーマンになっている」
とはいえ、以前より位置づけは低くなっているものの、企業にとって電話は依然、顧客などとの重要なコミュニケーション手段の1つであり続けている。このため、企業では実際に多くの問題が発生しており、「誤解を恐れずに言えば、今一番ホットなのが電話の研修」なのだという。
桑津氏はこうした利用者側の変化について、「これが、“いい”“悪い”と言いたいわけではない。携帯電話の本格普及から19年、なるべくしてなった」と、必然的な変化であると解説。そのうえで、「技術的な課題ではないので、『そこまで面倒見るのか?』と思われるかもしれないが、新人がきちんと電話を取れているのかは、よく見たほうがいい」と助言した。
さらには、「電話の使い方が劇的に変わっていることを前提」に、企業におけるコミュニケーションスタイルを考えていく必要があるとも語った。「よくUC(ユニファイドコミュニケーション)と言われるが、少なくとも利用者サイドは、だいぶUCの方に振られている」