2020年、無線通信の話題の中心はもっぱら5G/ローカル5Gだった。そうしたなかLPWAについては、NTTドコモが同年3月末でNB-IoTのサービス提供を終了したことが大きな注目を集めた。
国内には、NB-IoTやLTE-Mといったライセンス系、無線局免許が不要なアンライセンス系を含めて数多くのLPWA規格が商用で利用できる。2016~18年頃は何かと話題に上ることの多かったLPWAだが、その後は5G/ローカル5Gの陰に隠れている印象は拭えず、ドコモのニュースをきっかけに「NB-IoT以外の規格はどうなっているのか」「LPWAは大丈夫なのか」と疑問を持った人も少なくないようだ。
だが、あまり目立たないだけで、LPWAのユースケースは着実に広がっている。富士キメラ総研によると、アンライセンス系とライセンス系を合わせた回線数は、2020年度の350万回線から2021年度は410万回線に増加する見込みだ(図表)。
図表 LPWA市場規模推移
低消費電力・低ビットレート・広域カバレッジというLPWAの特徴は、どのような場面で活躍しているのか。一例として温湿度管理がある。
センサーで計測した温度や湿度などの環境データをLPWAでクラウドに送信し、PCやスマートフォンなどで遠隔監視できる温湿度管理システムは、店舗やオフィス、倉庫、工場など様々な場所に導入されている。
特にこの1~2年は、飲食店やスーパーの冷蔵庫・冷凍庫の温度管理のIoT化が進んでいる。これは2020年6月に食品業界でHACCP(危害要因分析重要管理点)が義務化されたことによるもので、その通信回線にはLoRaWANなどのLPWAが使われることが多い。
LPWAを活用した温湿度管理システムは、物流倉庫をはじめ様々な場所で導入が進んでいる
(写真提供:センスウェイ)
HACCPとは、原料の受け入れから最終製品までの工程のうち、危害の防止につながる重要工程について継続的に監視・記録することで安全を担保する仕組みのこと。1年間の猶予期間を経て、2021年6月から完全義務化されるが、中小事業者の対応が遅れていることから、2021年は“駆け込み需要”が増えることが予想される。
また、店舗やオフィスなど人が集まりやすい空間では、新型コロナウイルスの感染防止のための「3密」対策として、温湿度センサーに加えて、CO2センサーを用いて室内のCO2濃度を測定するニーズも急速に高まっている。