SPECIAL TOPICデータセンター間の100G化に強い味方 省エネとIP/光融合を一気に進めよう

データセンター間接続(DCI)や拠点間網の100G化を検討中の事業者に朗報だ。高価なトランスポンダーに投資することなく、100G DWDMを容易に導入できる光トランシーバーモジュールが間もなく登場する。しかも、消費電力は5Wと競合の半分以下。大容量化と省エネ化を両立する「Coherent 100G ZR QSFP28-DCO」に注目だ。

トランスポンダーはもう要らない 既存ルーターで80km伝送

本製品で大幅にコストが軽減できる理由は、高価なトランスポンダーが不要になるからだ。従来は図表左のように、2拠点にトランスポンダーを導入する必要があったが、本製品利用時は右のように、スイッチ/ルーターとトランシーバーだけのシンプルな構成になる。伝送距離は、アンプを使った場合で最大120km、アンプ無しでも最大80kmと、使い所は広い。

図表 従来のネットワーク構成(左)と、
「Coherent 100G ZR QSFP28-DCO」利用時のネットワーク構成(右)

図表 従来のネットワーク構成(左)と、「Coherent 100G ZR QSFP28-DCO」利用時のネットワーク構成(右)

トランスポンダーを不要にするこうした使い方が可能なDCO(デジタル コヒーレント オプティクス)モジュールは他にもあるが、それら競合製品と比べた一番の優位性が、冒頭にある省エネ性だ。「100G ZR DCOをサポートしているベンダーは今のところいない。100Gで使えるものがあるとしても、それは、400G DCO製品で“100Gでも使える”というだけ。その場合はフォームファクタがQSFP-DDになり、400Gもサポートするので消費電力は15W程度と大きくなってしまう」(米田氏)

Coherentはこれまで外部からDSPを調達してきたが、本製品には、同社が初めて内製した「Steelerton DSP」を搭載。これにより、QSFP28で100G ZRをサポートし、かつ消費電力5Wを実現する唯一のベンダーとなる。

フォームファクタがQSFP28であるため、100Gポートを備えたルーター/スイッチなら、ほぼすべての製品で使用可能だ。QSFP-DDポートを備える高価なルーターに買い替える必要はなく、投資を最小限に抑えることができる。

また、DSPの内製化によって、コア部品はすべて自社製造となり、製品供給と品質管理の安定性も向上。コロナ禍で多くのユーザーが苦しめられた調達リスクも低減される。

なお、CoherentはQSFP-DD DCO 400G ZR/ZR+モジュールもリリース済みだ。アンプ無しの長距離伝送が可能で、ROADMにも直接つなげられるハイパワー版(送信パワー:0dBm)が好評。最高レベルの大容量伝送を求めるなら400G ZR/ZR+、既存装置を有効活用してアップデートしたい顧客には100G ZRと2つの選択肢を用意している。

世界ではもう当たり前 光伝送市場の2つの新潮流

ルーター/スイッチに、純正品ではないモジュールを組み合わせて用いるオープン化/マルチベンダー化の動きが市場に浸透してきていることも、Coherent 100G ZR QSFP28-DCOへの期待を後押ししている理由だろう。

Coherentのトランシーバーモジュールは大手ネットワークベンダーに広く採用されており、その品質は折り紙付きだ。主要なルーター/スイッチ製品との互換性は高く、本製品もIEEE 802.3-2022 100GBASE-ZR標準に完全準拠。他のモジュールとの相互運用性も確保されている。

こうした特徴から、北米のハイパースケーラー/通信事業者は、DCネットワークやキャリア網に、純正品よりも安価でかつ高品質なCoherent製モジュールを採用し、大幅なコスト削減に成功している。「OFC 2023でも、オープン化はもう当たり前という雰囲気。どのベンダーも、これを大前提として製品を開発している」(米田氏)。

日本も例外ではない。Coherent製品を取り扱うマクニカ クラビス カンパニー ビジネスソリューション第2統括部 営業第3部 第3課 課長代理の角谷沙歩子氏は「筐体とモジュールのメーカーを分けて使いたいというお客様は確実に増えている。最近は小規模なお客様からの問い合わせも多く、浸透している実感がある」と話す。

もう1つ、ルーター内にトランスポンダーを内蔵して、光伝送システムをシンプル化しようとする本製品の狙いは、これもOFC 2023で大きな話題となった「IP over DWDM(IPと光伝送の融合)」の潮流とも合致する。Coherent 100G ZR QSFP28-DCOの登場は、オープン化とIP/光融合という最新トレンドを自社ネットワークに取り込むチャンスと言えるのではないだろうか。

一度使うと止められない Flextune™で波長設定を自動化

Coherent 100G ZR QSFP28-DCOの目玉は、実はもう1つある。Coherentにて特許を取得した独自機能「Flextune™」だ。同社の10G製品にも搭載されている機能で、応用技術部 技師の小林志康氏によれば、「これを気に入って我々の製品を導入されているお客様も少なくない」。

Flextune™とは、対向するモジュールとの波長設定を自動化する機能だ。通常は現場でマニュアル設定するか、波長ごとのトランシーバーを用意する必要があるが、Flextune™搭載モジュールならばルーター等に挿すだけで「勝手に相手を見つけてリンクを張ってくれる」(同氏)。作業がはかどるうえ、ヒューマンエラーも起こらない。まさに「一度使うと止められない」機能だ。

現在10GでDWDMを組んでいるユーザーは100G ZR QSFP28-DCOを導入することで、Flextune™の恩恵を受けつつネットワーク容量を10倍に増やすことができ、そこで発生する作業が煩雑化する心配はなくなるわけだ。

恩恵はそれだけではない。可変波長のモジュールで、かつ設定が自動化されているため、「モジュールの在庫が1種類で済む」(角谷氏)点も見逃せない。本来なら、複数種の固定波長モジュールを用意しておかなければならず、挿し間違いによるエラーも起こり得るが、本製品なら1種類で自動で波長をチューニングしてくれるので、挿し間違いの心配もない。まさに、プラグ&プレイが実現できるのだ。

こうした数々の特徴を活かして、マクニカはダークファイバーを使用する事業者を中心に展開していく考えだ。10Gから100Gへのアップグレードを計画している人なら間違いなく、一考に値する選択肢となるはずだ。

JANOG52 Meetingで80km伝送とFlextune™を実演

ここまで紹介してきたCoherent製品の実力を、実際に目の当たりにできる機会がもうすぐ訪れる。2023年7月5日(水)~7日(金)に長崎市で開催される「JANOG52 Meeting in Nagasaki」だ。

マクニカは同会場にFlextune™を搭載したSFP+のデモ環境を構築し、Coherent製トランシーバーモジュールを使った光伝送を実演する。「アンプ無しで80kmを実際に通すところをお見せするので、注目してもらいたい」と話すのは、このデモを担当するマクニカ クラビス カンパニー 第2技術統括部 技術第2部 第2課の松野晃樹氏だ。

また、合わせてFlextune™機能も実演。「自動チューニングの様子も、視覚的に確認していただける」(同氏)よう準備中だ。本記事を読んでCoherentの技術が気になった読者は、ぜひJANOG52に足を運んでみてほしい。

<お問い合わせ>
株式会社マクニカ
クラビス カンパニー
Coherent 製品担当
TEL:045-470-9821
E-Mail:clvinfo@macnica.co.jp
URL:https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/support/contact/?product=Coherent%20Corp.

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