近年、汎用CPUの性能向上や通信機能のソフトウェア化・仮想化技術の進化を背景に、汎用サーバー上に無線基地局の機能をソフトウェアで構成する仮想化基地局(vRAN)に注目が集まっている。
仮想化基地局は、従来の専用ハードウェアと比べて構築コストが大幅に低減化されるのがメリットだ。その一方、汎用サーバーは汎用処理に伴う非効率性があるため、仮想化基地局は消費電力が課題とされる。
「性能を高めようとすると消費電力が増えるというように、性能向上と消費電力削減はトレードオフの関係にある。マイクロ秒オーダーの遅延要件が求められる基地局では特に両立が難しい」とNTTネットワークイノベーションセンタ 研究員の福元健氏は語った。
NTTネットワークイノベーションセンタ 研究員の福元健氏
こうした中でNTTは、仮想化基地局の消費電力削減に着目した省電力イネーブラの研究を立ち上げ、取り組んできた。
省電力イネーブラとは、ソフトウェアに適用することで省電力化を実現する技術だ。NTTでは仮想化基地局の各ソフトウェア処理を消費電力の観点で分析し、非効率な処理を改善するため複数の技術を考案した。
低負荷時に大きな省電力効果を発揮する
このほど行われた技術実証実験では、富士通製の仮想化基地局のDUに省電力イネーブラを活用し、実際の商用ネットワークに近い環境で有効性の評価を行った。