<特集>クルマと通信 SDV時代のビジネスチャンス国内メーカーのSDV戦略 トヨタ・ホンダ・日産らの動向は?

いつの世も技術トレンドは目まぐるしく移り変わるもの。世界の自動車産業が注力するSDVは、車両だけでなく、製品開発の在り方そのものを大きく変えようとしている。各社のSDV開発の現状を探る。

少し前まで自動車業界は「CASE」一色だった。CASEが意味するコネクテッド(C)、自動運転(A)、シェアサービス(S)、電動化(E)の4項目が重要であることに変わりはないが、この数年で業界を象徴する言葉は「SDV(Software Defined Vehicle)」へと切り替わった。CASEが自動車の構成要素を挙げているのに対して、SDVは進化の方向性を指し示している点で大きく異なる。

SDVに関しては、経済産業省と国土交通省が2024年に策定した「モビリティDX戦略」において、グローバルで日系シェア3割という野心的な目標が掲げられている。世界的なEVシフトの息切れも追い風に、いよいよ各社の取り組みは加速していくだろう。

SDV開発で注目されるテーマの1つが車載OS(ビークルOS)だ。SDVを「クルマのスマホ化」と表現することがあるが、今まさにその変化が起ころうとしている。携帯電話はカメラなどの機能が次々と追加されながら進化したのち、それらを統合管理できるOS搭載のスマホが登場したことでパラダイムシフトが起きた。

自動車は電動化や知能化のための車載ECU(電子制御ユニット)やソフトウェアの数が急増し、今後もさらなる増加が見込まれることから、統合管理するプラットフォームとしての車載OSが必要とされている。

トヨタとホンダのOS開発

トヨタ自動車は、グループ会社のウーブン・バイ・トヨタが車載OS「AreneOS」の開発を進める。Arene OSはソフトウェア開発のソリューションという側面を持ち、トヨタとサプライヤーは共通プラットフォームと標準化されたプロセスを使って効率的な開発を目指すという。

当初はスマホのようにサードパーティに開発キットを提供する案も出ていたが、ウーブンの位置付けが変化する中でトーンが変わってきた。2025年内には「モビリティのテストコース」である静岡県裾野市のウーブン・シティに住民が住み始める。そのタイミングでArene OSについて新たな情報が出てくると見られる。

静岡県裾野市のウーブン・シティはモビリティのテストコースという位置付け(出典:トヨタ自動車)

静岡県裾野市のウーブン・シティはモビリティのテストコースという位置付け(出典:トヨタ自動車)

本田技研工業(ホンダ)も独自に車載OS開発を進めており、2025年1月に米国ラスベガスで開催されたCESで、2026年発売予定のEV「Honda 0シリーズ」に「ASIMO OS」を搭載すると発表した。二足歩行ロボットとしてのASIMOは2022年に引退したが、1980年代から続けてきた研究開発は車載OSへと引き継がれたわけだ。

ホンダはCES2025で車載OSを発表。写真は本田技研工業執行役専務 電動事業開発本部長 井上勝史氏(出典:本田技研工業)

ホンダはCES2025で車載OSを発表。写真は本田技研工業執行役専務 電動事業開発本部長 井上勝史氏(出典:本田技研工業)

ホンダはASIMO OSをSDVの核と位置づけ、AD/ADAS(自動運転/先進運転支援システム)の統合制御や、クラウド連携によるOTA(Over The Air)でのソフトウェアのアップデートなども行うとしている。トヨタが開発プロセスやサプライヤーとの連携を前面に打ち出しているのに対して、ホンダは車両そのものをホンダらしく進化させる方向に重きを置いているようだ。

老若男女に愛されたASIMOがOSとなって復活(出典:本田技研工業)

老若男女に愛されたASIMOがOSとなって復活(出典:本田技研工業)

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