IoT時代にクラウドが直面する限界とは?――シスコがフォグコンピューティング製品を発表

Internet of Things(IoT)時代の新しいコンピューティングモデルとしてシスコが提案する「フォグコンピューティング」。その具体的なソリューションである「Cisco IOx」が遂に発表された。IoT時代に向けて、IOxはどんな課題を解決するのだろうか。

「インターネットに接続されるデバイスの数は、2020年に500億台に達する」。Cisco IBSG(Internet Business Solutions Group)はこう予測しているが、あらゆるモノがネットワークにつながるInternet of Things(IoT)の世界を実現するにあたって、ボトルネックとなるのは何だろうか。

インターネット接続デバイス数に関する予測データ
インターネット接続デバイス数に関する予測データ

シスコの解答は「ネットワーク」だ。500億にも上るセンサーなどのデバイスが生み出すデータ量はとにかく膨大だ。スマートデバイスの急増によるトラフィック爆発が現在大きな課題となっているが、そこに今はまだつながっていないモノのトラフィックがさらに加わったらどうなるのか。例えば、大規模な石油精製工場は1日1TB、飛行機は30分毎に10TBのデータを生成しているという。

デバイスが生成したデータを、ネットワークを介してデータセンターに集約して処理するという従来のクラウドコンピューティングのアーキテクチャは、IoTの時代に限界に突き当たるというのが、シスコの考えである。

そこでシスコが2012年から提唱しているコンセプトが「フォグコンピューティング」だ(関連記事:シスコが“IoT”推進へインキュベーションラボ開設 「Internet Everythingの実現を強く約束する」)。2014年2月25日、シスコはこのフォグコンピューティングを実現する具体的なソリューションとして「Cisco IOx」を発表した。

ルーター上にLinux環境を搭載し分散コンピューティング実現

米シスコシステムズ バイスプレジデント兼ジェネラルマネジャー IoTグループのギド・ジュレ氏は、フォグコンピューティングについて「クラウドの発展形」と紹介した。クラウド(雲)にならったフォグ(霧)という名前の付け方からも分かるが、クラウドを否定するものではなく、IoT時代に最適化すべくクラウドのアーキテクチャの拡張を図ったのがフォグコンピューティングだ。

フォグコンピューティングのコンセプト図
フォグコンピューティングのコンセプト図

フォグコンピューティングとは具体的には、クラウドと連携しながら、エンドユーザーに近いエッジ部分でもデータやトラフィックの処理を行う分散コンピューティングモデルである。クラウドコンピューティングがクラウドとデバイスの2層なのに対し、フォグコンピューティングはクラウド-フォグ-デバイスの3層構造をとる。

今回発表されたIOxとは、このフォグの部分を実際に担うプラットフォームのことだ。シスコのネットワークOSであるCisco IOSとLinuxを結合したアプリケーション開発実行環境がIOxである。最初のIOx製品としては、ISR 819、CGR 1120、CGR 1240が提供されるが、これらルーター上の1つのコアにはIOS、もう1つのコアにはLinuxのコンピューティング環境を搭載し、IoT向けのアプリケーションを実行できるという。

フォグコンピューティングの概念図と最初の対応製品
最初のIOx対応製品

また、アプリケーションについては、IOxアプリケーションを容易に開発できるようにするためのSDKに加えて、App Storeも提供し、「アプリケーションパートナーと共に、コ・イノベーションを進めていく」と専務執行役員の木下剛氏は語った。

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