親会社の事業基盤が強み国内でインフラシェアリングを手掛ける事業者としては、すでにトンネルや地下街、医療機関など電波不感地帯に設備を構築するJMCIA(公益社団法人移動通信基盤整備協会)や独立系のJTOWERがいる。
Sharing Designは後発に当たるが、「基地局共用事業のパイは非常に大きい。レッドオーシャンにはほど遠く、JMCIAやJTOWERが手掛けていないエリアはまだ多く残されている」と木下氏は強調する。
Sharing Designが先行2社との差別化要素として捉えているのが、親会社2社の存在だ。
なかでも「City as a Service」構想を掲げる東急は、沿線に光ファイバー網を敷設したり、地域住民向けにWi-Fiサービスやホームセキュリティサービスを提供するなど、デジタル都市基盤の整備を積極的に進めてきた。最近は大容量通信インフラ整備の一環として、渋谷駅周辺や東急沿線に5G環境を早期に構築することで「エンタテイメントシティ SHIBUYA」「日本一住みたい沿線 東急沿線」の実現を目指している。東急は全国にホテルやオフィスビル、空港も展開する。「人が多く集まる駅構内や商業施設、ホテルなどは、基地局共用のニーズが見込める」(木下氏)という。
住商は通信を含むメディア・デジタル事業を主力6事業の1つと位置付けており、CATV最大手ジュピターテレコム(J:COM)を運営したり、携帯キャリア向けにサプライチェーンマネジメントサービスを提供している。海外では、ロシアにおいて10年以上前から基地局共用事業を展開してきた実績も有する。
「両社とも基地局共用事業はまったくの“飛び地”というわけではない。それぞれの持つ事業基盤を活用できるのは当社の強みになる」(木下氏)
Sharing Designは目下、サブ6帯に対応した共用化装置・共用アンテナを国内メーカーと開発し、最終段階を迎えている。
共用化装置(親機)
共用アンテナ
今夏には、複合商業施設「渋谷マークシティ」で実証実験を開始する。飲食店や京王井の頭線の改札口があるフロアに共用化装置・共用アンテナを設置し、実際に各社の電波を吹く予定だ。「電波のクオリティが携帯キャリアの求める水準に達しているかどうかを確認していただき、運用・保守にも問題がなければ、そのまま商用サービスを開始したい」と木下氏は述べる。
実証実験では、「渋谷マークシティ」に共用化装置・共用アンテナを設置する
屋外のスマートポールも展開Sharing Designでは、屋外向けのインフラシェアリングも展開する。
住商とJ:COMのグループ会社ジェイコム東京は2020年1月、港区と5G活用促進に向けた連携協定を締結した。その一環として、新橋駅前にあるSL広場の区有地に、5Gアンテナなどを搭載するスマートポールの設置準備を進めているところだ。また、住商は東広島市と広島大学とともに大学、周辺地域の早期5G化を行い、スマートシティの実現を目指している。
一方、東急は渋谷区との間で、渋谷駅を中心とした5G環境の整備を含むグローバル拠点都市の形成等に関する包括連携協定を結んでいる。
渋谷区は今年度から2年間、区内にスマートポールを設置しようとする事業者に対し費用の一部を補助する制度も設けており、人通りの多い場所にスマートポールを設置し、5Gエリア化を支援する。
Sharing Designには、不動産オーナーからも多くの問い合わせが寄せられている。「5Gに早期に対応することは物件の付加価値向上にもつながる」と木下氏。2021年度末までに100拠点を目標に、全国に事業を展開していきたいという。