「今のダークファイバーの市場は、お客様目線で考えるとボトルネックがある。“波長貸し”を始めるのは、それを変えるためだ。うちは後発だから、市場を壊しにいく」
そう語るのは、ダークファイバーによる専用線サービスを手掛けるビー・ビー・バックボーン(以下、BBバックボーン)の光事業統括部 事業開発部部長を務める中谷敏之氏だ。
同社は2019年7月に、大手町・有明エリア間で光の波長貸しサービス「BBB Spectrum」を開始した(図表1の青色の部分)。波長貸しとは光ファイバーのサービス提供形態の一種で、ファイバー単位の“芯線貸し”ではなく、WDMで多重化した波長の一部を貸し出すものだ。通信キャリア間では一般的に行われているが、ユーザーに対して表立って行われるケースはこれまでほとんどなかった。一部のキャリアが裏メニュー的に提供してきたというのが実情だ。
BBB Spectrumは第1段階として、同じくソフトバンク子会社であるIDCフロンティアに提供されており、「来期はエリアを広げて本格的に展開する」計画だ。
図表1 BBバックボーンの光波長貸しサービス「BBB Spectrum」
最大200Gbpsの波長を貸し出し中谷氏によれば、海外では新興キャリアが大手キャリアへの対抗策として、波長貸しサービスを全面的に押し出してビジネスを展開しているという。メインターゲットは帯域需要が急増しているDCI市場で、5G開始に伴うトラフィック増によって、ニーズはさらに高まると期待される。
BBB Spectrumでは、大容量長距離伝送に適したDWDM(高密度波長分割多重)を用いて、2芯の光ファイバーに96波(1波:50GHz)を実装。これを波長単位で貸し出す。1波当たり100~200Gbpsの伝送が可能だ。
波長貸しのメリットは、回線コストの低廉化だ。
一般的な芯線貸しサービスは高額だ。国内で売れ筋の10Gbpsの価格は下落傾向にあるものの、広帯域な100Gbpsのメニューは、比較的安価であるダークファイバーを利用した専用線サービスでも月額料金が100万円を優に超える。DCIのように冗長化のために異ルートを調達するとなると、利用できるのは資金が潤沢な一部の企業だけだ。
波長貸しならば1本のファイバーに複数企業が相乗りできるためコストが抑えられる。増強もしやすい。
WDM技術の進化によって、今では1本のファイバーで20Tbps(200Gbps×100ch)程度の伝送が可能になった。近い将来には40Tbpsも見えてくる。こうした最新の技術を活用し、波長単位で貸し借りできるようになれば、ユーザーにとって100Gbps超の大容量伝送も身近なものになる。
中谷氏は、「高額な100Gbpsサービスと、低価格な10Gbpsの中間として波長貸しがフィットするのではないか」と話す。現在主流の10Gbpsサービスに「できるだけ近い価格帯で攻めたい」という。