光ファイバーで高速・大容量通信を行う光伝送技術は、今や様々な場所で活用されるようになった。通信事業者ネットワーク(以下、キャリア網)やデータセンター(DC)ネットワークはもちろん、10ギガイーサネット(GE)の導入が進む企業ネットワークでも、主に幹線配線でUTPケーブルから光ファイバーへの移行が進んでいる。
ビデオ等の大容量コンテンツを利用する機会が増え、さらにIoT/AI活用も本格化する今後、データトラフィックの増大にはいっそう拍車がかかる。デジタルトランスフォーメーション(DX)を支える通信インフラとして、光伝送技術の活用範囲はさらに広がっていくだろう。
特に高速・大容量な通信が求められるキャリア網では、すでに100G伝送が主流になっている。2019年からは、400G伝送の普及が本格化するだろう。大規模なクラウドDCでも近年、ラック間接続やDC間相互接続(DCI)で100G化が進行中だ。
企業LANでは、コアネットワーク以外でも10GE化が進むと予想される。SFP+ポート付きの10GNASやサーバー用NICが一般化しており、PCやスマートフォン等のエンドデバイスを収容する無線LANも1Gbpsを超える規格が普及している。LANを10G化する場合はUTPケーブルをカテゴリー6A以上にしなければならないことを考えると、将来を見据えて光ケーブルを選ぶケースも出てくるはずだ。
それに伴い、フロアLANを収容する基幹配線やDCネットワークでは25/40/100G化のニーズが高まる。
図表 データセンターにおける光伝送の広帯域化
2020年代は「800G」実用化へこうした広帯域化ニーズに応えるため、光伝送システムはどのように進化しているのか。注目すべきポイントは2つある。(1)光伝送技術そのものの進化と、(2)光伝送装置の機能分離(ディスアグリゲーション)/オープン化だ。
(1)については2017年頃から、キャリア網への400G伝送の導入が始まった。例として、NTTコミュニケーションズが同年4月から基幹網への400G伝送装置の導入を進めている。
最近では、キャリア向け光伝送システムを提供する米シエナが2019年2月に、楽天モバイルが新たに展開するモバイルネットワークにシエナの光伝送システムを導入すると発表した。将来的な5Gへの拡張を見据えて、最大400Gbpsの伝送が可能な「6500シリーズ」が採用された。今後、メトロから全国バックボーンまで広く400G伝送技術の導入が進むとみられる。
キャリア網で多く採用されているシエナの光パケット伝送システム「6500シリーズ」
さらにシエナは2月に、1波長当たり800Gbps伝送を可能にする次世代チップセット「WaveLogic 5」を発表した。2019年内に製品化する計画だ。
伝送容量が拡大すれば、ユーザーは様々なメリットが得られる。ビット当たりの伝送コストが低減するほか、低消費電力化や省スペース化にもつながるからだ。