新世代の「FP4」チップは、前世代のFP3から、いくつかの段階をすっ飛ばして進化したものだ――。
Nokia アジア太平洋地域 IP/Opticalネットワーク事業責任者のケント・ウォン(Kent Wong)氏は、飛躍的な進歩を遂げた新世代チップの能力をこう表現した。
Nokia アジア太平洋地域 IP/Opticalネットワーク事業責任者のケント・ウォン氏(左)と
ノキア日本法人 IP/Opticalネットワークス IPルーティング本部長の鹿志村康生氏
ノキアの第3世代チップであるFP3は400Gbpsをサポートしているが、FP4ではこれを、6倍となる2.4T(テラ)bpsにまで一気に引き上げた。同氏によれば、16nm FinFET Plusや2.5次元設計、独自開発のインテリジェントメモリーなどの新技術を採用し、パフォーマンスと効率性を飛躍的に向上させたという。
また、ウォン氏は、競合他社が採用しているネットワークプロセッサではフィルタリング等の機能を有効にした場合にフォワーディング能力が損なわれるのに対して、FP4では「どのような機能をONにしても性能が落ちない」ことを強調。「パフォーマンスは決して妥協しない」と、その能力をアピールした。
前世代のチップセットから処理性能を一気に6倍まで引き上げた
この処理能力の高さに加えて、FP4にはさらにあと2つ、競合他社と差別化するためのポイントがあるという。
1つが「プログラミング可能なネットワークプロセッサである」ことだ。新たな機能が必要になった場合、チップのプログラムを変更してそれを搭載することができる。これにより、トラフィックの挙動変化等に即座に対応してネットワークのポリシーをダイナミックに変更するといった「適応性を持つネットワーク」が実現できるという。
例えば、ネットワークトラフィックを解析するノキアのソリューション「DeepField」によってトラフィックの種別や流量を可視化し、あるトラフィックを優先制御しようとする場合は、SDNコントローラに新たなポリシーを与えると、それがルーター内のFP4に反映され、新たなQoSのポリシーが適用されるといった運用が可能になる。
IoTの普及によって、ネットワークを流れるトラフィックはますます多様化している。そのため、「これからのネットワークにはリアルタイムにトラフィックを洞察する能力と、変化にダイナミックに対応できる能力が必要になる」とウォン氏。新チップのFP4を搭載したルーターとDeepFieldやSDNを連携させることで、ネットワークの運用を自動化するソリューションを提供する。
■チップレベルでDDoS攻撃を防御
もう1つのポイントは、セキュリティだ。前述のDeepFieldによるトラフィック解析と、FP4の「パケットインテリジェンス」を組み合わせることで、チップセットレベルでDDoS攻撃等のセキュリティ脅威に対抗することが可能になるという。その方法を図示したのが下の画像だ。
左側が従来手法。右がFP4による新たなDDoSフィルタリング
通信キャリアで使われているコアルーターには、トラフィックを“掃除”する機能が備わっている。簡単に言うと、悪意のあるトラフィックを識別して、そのパケットをドロップさせるという手法だ。
ただし、これを行うには、DDoS攻撃であると疑われるパケットを一旦、それを解析する「スクラビングセンター」へ転送しなければならない。だが、DDoS攻撃が大規模化するに伴って転送負荷が非常に大きくなり、こうした手法を取り続けるのが困難になりつつあるという。
そこでノキアが提案するのが、上図の右側に示した方法だ。スクラビングセンターを使わず、FP4でDDoSフィルタリングを行うのである。
DeepFieldの解析によって悪意のあるトラフィックを識別するためのシグネチャを生成し、それをFP4に直接プログラミングする。FP4はそのシグネチャに当てはまるパケットをその場で識別し、ドロップする。ルーター内でDDoSフィルタリングが完結するため、スクラビングセンターのコストも転送コストもかからないというわけだ。
ノキアは「Volumetric DDoSアタック ミティゲーション」と呼ぶこの仕組みにより、大規模化、巧妙化するサイバー攻撃への対抗手段を通信キャリアやサービスプロバイダ向けに提供していくという。