また、モチベーション管理の観点から言えば、ある人を頻繁に異動させることも困難です。その人が異動先の部署と合わなかった(人事異動のリスクが顕在化した)としても、何年かは異動先に留まってもらうしかありません。これは、個人と企業の双方にとって不幸です。
ところが、同じく人材を活性化させるにしても、第4章までで述べてきたようなソーシャルテクノロジーによる柔らかいつながりは、これらとは一線を画しています。人事異動のようなリスクを伴わず、社員一人ひとりに対してどの部署に所属しているかに関係なく、個人の知識を全ての側面から活用できる機会を与えます。いつもと同じ職場で慣れ親しんだ手順で仕事をこなしているとき、社内ネットワークの向こうから不意にこう聞かれます。「ねぇ、あなたって確かロッテファンだったよね」――こうして、あなたの持つ個人の知識は、あなたが今まで築いてきた職場内の人間関係や慣れ親しんだ業務ノウハウを犠牲にすることなく、新しいつながりを持ち始めます。
企業の中で個人の知識がフル活用されるということは、「個々人が人生という時間を投資して得た唯一無二の資産」である知識が余すところなく組織内でシェアされるわけです。組織的に見れば、人という財産「人財」を体力的にではなく“脳力的”に使い倒す――企業の各社員が持つ英知の全てを、組織として目指す社会貢献というベクトルのため、ムダに思える部分も遍く広くすくい出して社会に届ける――ということです。
今日のような激しい環境変化に対応していくとき、最も有効な資産は、土地でも工場でも技術でもありません。どんな環境にあっても、自分たちの知識や経験を“力”に変えて新しいビジネスチャンスを見出していくことができる「人」だと言えるのではないでしょうか。
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