「ICT先進都市と言えば会津若松市」――。そんな認識が定着し始めている会津若松市では、ICTを活用した数々のプロジェクトが展開されている。
同市がICT活用に積極的な背景には、ICT専門大学の会津大学、震災復興のため会津若松市に福島イノベーションセンターを開設したアクセンチュア、そして何よりICT活用に意欲的な室井照一市長の存在がある。
会津若松市を実証フィールドとした先進的な取り組みは、日本が抱えている課題の解決につながる可能性を秘めている。その取り組みの1つが「IoTヘルスケアプラットフォーム事業」であり、医療費の課題に対する解決策として期待されている。
医療費の増加と「2025年問題」長年にわたり、日本の医療費は増え続けている。厚生労働省が2016年9月13日に発表した内容によれば、2015年度の概算医療費は41.5兆円。前年度比で1.5兆円も増加した。
会津若松市も例外ではない。市の人口は減少しているにもかかわらず、医療費は増加するばかり。医療費のなかでも特に目立っているのは介護給付費だ。現在、同市の人口は約12万人だが、介護給付費は年間100億円にも上るという。
これから8年後、日本は「2025年問題」に直面する。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に到達する2025年、医療や年金、介護、福祉など様々な面できしみが生じ、数多くの深刻な問題が噴出する。
「そうなるのが分かっていて、指をくわえて見ているわけにはいかない」。そうした問題意識のもと、会津若松市は2025年問題の対策を練るため、健康福祉部各課のグループリーダー会議を2013年から定期開催した。
その会議の検討結果を、会津若松市の健康福祉部・高齢福祉課で主幹を務める宮森健一朗氏は次のように語る。
「必要だと考えた対策の1つが『健康づくりの推進』。団塊の世代はもちろん、若い世代も含めた予防医療に取り組み、健康寿命を延ばすことだった」
(左奥から時計回り)会津若松市・健康福祉部高齢福祉課主幹の宮森健一朗氏、同・企画政策部副参事でスマートシティ推進担当の村井遊氏、アクセンチュア・福島イノベーションセンター長の中村彰二朗氏、会津若松市・国保年金課の目黒純氏。宮森氏と中村氏が左手首に付けているのは、IoTヘルスケアプラットフォームにバイタルデータを集めるためのスマートウォッチ |