2023年春に商用サービスがスタートしたIOWN APN。当初は最大400Gbpsの帯域保証で、県内通信限定、インターフェースもOTU4のみという内容でスタートしたが、2024年末からは“step2”として、最大帯域を800Gbps、提供エリアを県間通信に拡大。インターフェースもイーサネットをサポートした。
そして、NTTは2028年度以降に“step3”のサービス提供開始を計画している。
その目玉が、光パスを「オンデマンドで切り替える」機能だ。IOWN APNでつなぎたい場所と経路を、ユーザーが簡単に切り替えられるようにすることで利用シーンを拡大し、普及を加速させるのが狙いである。
NTTは2025年4月25日、この新機能の実証に成功したことを発表した。発表に合わせて開催したオンライン記者説明会で、NTTネットワークサービスシステム研究所 ネットワーク基盤技術研究プロジェクト 主任研究員の関剛志氏は、「APNの新たな接続形態として、送受信機を光ネットワークに接続するだけで、任意の場所から必要なときだけタイムリーに大容量・低遅延の光パスを利用できるようになる」とAPN step3の利用イメージを説明した。
NTTネットワークサービスシステム研究所 ネットワーク基盤技術研究プロジェクト 主任研究員の関剛志氏
作業員の派遣も現場作業も一切不要
このオンデマンド接続のユースケースとして関氏が挙げるのが、スポーツ中継だ。大容量・低遅延のAPNは、スタジアム等から映像編集オフィスへと試合映像データを伝送するのに適しているが、試合の度に会場が変わるので、送受信機の設置・設定作業を行う作業員を現地に派遣したり、現場作業と連携して開通確認等を行うオペレーション作業者との日程調整などに手間がかかる(下図表の左)。
従来の設定とオンデマンドパス設定の違い
NTTが今回実証した技術では、この作業員の派遣・手配が不要になる。「ユーザー自身が試合会場で撮影機材にAPNデータ送受信機を接続し、光ファイバーをつなぐだけで」APNが利用できるようになる。ネットワーク側で送受信機の接続を検知すると、自律的に設定が行われて光パスが開通する。「APNが普及したときを想定すれば、この効率化が必要だ」(関氏)
オンデマンドパス設定が実現した場合のイメージを示したのが下の図表だ。左下のエンタメ施設に、APN接続機能を持つ端末(トランシーバー)を設置して既存の光回線を接続すれば、「映像編集オフィスとの間で、緑色で示した光パスが自律的に設定される」。別の拠点トランシーバーを持っていけば、青色のパスが即座に開通する。