ドコモ、通信サービスの最適化に向け量子コンピューティング基盤を基地局に適用

NTTドコモは2024年6月27日、量子アニーリング(量子揺らぎを利用して最適化問題を解くアルゴリズム)技術を活用した量子コンピューティング基盤を開発したと発表した。まずは本基盤を通信サービスの最適化に向けて、今年7月から順次、全国の基地局への適用を始める。

量子コンピューティング基盤の概要

量子コンピューティング基盤の概要

ドコモは本基盤を活用し、基地局への負荷軽減および着信集中時の混雑緩和を実現する。具体的には、ユーザーの端末へ基地局から送信するページング信号の信号数を削減するもので、量子コンピューターを用いたページング信号を削減するアルゴリズムの開発は世界初だという。また、本基盤の有用性を検証するため、東海、中国、九州エリアの基地局において実証実験を行い、最大15%のページング信号を削減したことを実証し、確認した。これは、着信集中時に現在の約1.2倍多い端末数を接続できることに相当するとしている。

実証実験によりページング信号数が削減された様子(縦軸︓ページング信号数、横軸︓日付(実証実験の前後 1 週間))

実証実験によりページング信号数が削減された様子(縦軸︓ページング信号数、横軸︓日付(実証実験の前後 1 週間))

モバイル通信は、ユーザーの端末の着信を可能とするために、基地局からユーザーのスマートフォンなどの端末にページング信号を発信し、端末からの応答を得ることで位置を把握する。そのページング信号のデータ量は増加傾向にあり、端末からの応答がない場合、より広い範囲で再送を繰り返す必要があることに加え、昨今スマートウォッチやIoT機器などの普及にともない、ページング信号増大による基地局設備への負荷が課題となっている。

この課題を解決するため、量子コンピューティング技術を用いた本基盤を活用し、従来のコンピューターでは求解できない規模のデータ処理を可能とすることで、ページング信号の削減を実現する。具体的には端末がどの基地局で終話・着信したかを記録した大量のログデータからなる統計データを基に、まとめてページング信号を送る基地局のグループ(以下、トラッキングエリア)の最適化を行う。量子コンピューターを活用することで、その特性を活かし、基地局すべての組み合わせに対して同時にページング信号数を予測できるため、膨大な組み合わせの中からより少ないページング信号数で端末を発見するための最適なトラッキングエリアを短時間で割り出すことが可能になる。これにより、信号数を最小限に抑え、基地局のリソースに余裕を持たせ、着信集中時においても通信に影響が出ないよう通信品質の安定性に貢献するという。

今後、本基盤を通信領域だけではなくドコモが提供する様々な領域のサービスへ展開することで、快適なサービスの提供を目指すとしている。

量子コンピューティング基盤の活用イメージ

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