「ITコストの削減」は、オンプレミスシステムをクラウドへ移行する最大の目的の1つと言っていい。だが、移行しさえすればコストが下がるわけではない。クラウドの利点を十分に理解し、利用実態に合わせて適切なサービスや機能を選び、組み合わせることが不可欠だ。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)が顧客企業に提供している移行支援サービス「ITトランスフォーメーションパッケージ(ITXパッケージ)」においても、このコスト最適化は重要なテーマだ。
2021年9月6日に開催されたオンライン記者説明会で、事業開発統括本部 統括本部長の佐藤有紀子氏は「コストに係わるお客様の困りごと」として、次の2つを挙げた。
AWSジャパン 事業開発統括本部 統括本部長の佐藤有紀子氏
1つは、「オンプレミスでの使い方を継続してしまうことで、AWS移行後も思ったようなコスト削減ができないケース」だ。これについては、まず「クラウドの最大のメリットである弾力性を理解していただき、それまでオンプレミスでやっていたようにピーク時に合わせて設計していないか、ワークロードの特性に合わせて適切なオプションが設定されているか」といった点を検証、適正化する。
AWS移行後に顧客企業が陥りやすい課題
2つめに、そのコスト最適化の取り組みを持続させ、かつ組織横断的に実践していくことが難しい。「長期間利用するなかで、一部の組織ではコスト削減ができているが、他の組織ではできないという状況が生まれてくる」(佐藤氏)。
これには、クラウドネイティブなアーキテクチャを活用するという観点に加えて、人材育成や組織体制をクラウド向けに適応させたり、運用プロセスを見直したりと多角的な取り組みが求められる。
AWSコストの最適化へ「3つのプログラム」
こうした課題を解消するため、AWSジャパンがITXパッケージのなかで提供しているのが「AWS コスト最適化フレームワーク」だ。
ユーザーがAWSを利用する段階に応じて、「Cloud Economics(CE)」「Cloud Financial Management(CFM)」「Financial Hackathon(FinHack)」の3種類のプログラムを用意。いずれも無償で提供されている。
AWSコストの最適化を目的とした3つのプログラム
CEはAWS移行前に、TCO(総所有コスト)分析の専門チームが、オンプレミスとAWSクラウドのTCO比較分析を行うもの。移行による経済効果の試算・評価を支援する。
移行の初期フェーズでは、Cloud Financial Management(CFM)により、AWSの利用状況とコストを可視化・分析。数カ月かけて削減計画を実行し、その結果を報告する。
そして、組織横断的にコスト最適化を行う際には、Financial Hackathon(FinHack)で様々な組織のAWSスキルの底上げを図る。
「ヒアリングによって課題を明確化した後、AWS内の専門家を招集してお客様とワークショップを行う」(佐藤氏)。経営層や財務部門、IT部門、業務・サービス部門など顧客企業の各組織が参加して課題を共有し、今後の改善計画を検討する。