<特集>6G徹底解明6Gの電波は上空から 低軌道衛星やHAPSの商用化で実現

6Gでは、あらゆる場所で超高速通信が可能になる。その実現の鍵を握るのが、低軌道衛星やHAPSによる上空からのエリア化。2020年代半ばにも商用化されそうだ。

Beyond 5G/6Gの重要なポイントの1つは、非地上系ネットワーク(NTN:Non Terrestrial Network)技術の進化だ。これにより、宇宙や空、海など、4Gや5Gではカバーできなかったエリアでも超高速通信が可能となる。

宇宙空間にアンテナを浮かべ、地上のスマートフォンに直接通信を提供する─。ひと昔前であれば「荒唐無稽な話」と一笑に付されていたような大胆なプロジェクトに乗り出しているのは、楽天モバイルだ。

同社は、米AST SpaceMobile社と協力し、ASTが高度約700kmに打ち上げる低軌道衛星を使って日本全土に通信ネットワークを構築する「スペースモバイル計画」を推進している。

衛星1機が同時に発射できるビーム数は帯域幅20MHzの場合で280、1サービスリンク当たりのビーム径(地上で1ビームが通信可能な範囲)は直径約24km。フェーズドアレイアンテナによりアンテナ利得を最大化することで、日本全国をわずか2機でカバーすることができる。展開する衛星の数が少なくて済む点も強みだという。

また、これまでの衛星通信は、高額な専用端末が必要なことが課題だった。これに対し、スペースモバイルは、ASTの衛星から地上の携帯電話と同じ無線方式・周波数帯の電波を発射することができる。既存端末からの通信については、衛星側のアンテナ利得を大きくし、スペースモバイル用のeNB(無線基地局)でドップラーシフトや遅延など、衛星通信に必要な補正を行うことで、「ユーザーが今使っているスマートフォンをそのまま利用できる点が大きく異なる」と楽天モバイル 技術戦略本部 標準化部 部長の千葉恒彦氏は説明する(図表1)。

図表1 「スペースモバイル計画」のネットワーク構成

図表1 「スペースモバイル計画」のネットワーク構成

楽天モバイルがスペースモバイルを推進する狙いは、主に2点ある。

1つめが、カバーエリアの拡大だ。

国内の携帯キャリアの人口カバー率は約99%だが、エリアカバー率については60~70%程度に過ぎない。山間部や離島、海洋など、今なお圏外のところが少なくないのだ。こうしたエリアをスペースモバイルで「圏内」にすることで、地上局と合わせてエリアカバー率99.9%以上を目指したいという。

2つめが、災害時の通信手段としての活用だ。

大規模地震や大津波により地上基地局が甚大な被害を受けた際、楽天モバイルでは代替手段として可搬型基地局などを準備している。しかし、輸送路が寸断されれば、被災地まで運ぶことは難しい。そうした場合に、代わりに衛星から被災地にビームフォーミングによって通信を提供することを検討している。

楽天モバイル 技術戦略本部 標準化部 部長 千葉恒彦氏
楽天モバイル 技術戦略本部 標準化部 部長 千葉恒彦氏

スペースモバイルは現状、日本では4Gに割り当てられている1.7/1.8GHz帯に対応しており、理論上の通信速度は1衛星との通信で1ビームあたり、下りは100Mbps程度だが、使用する帯域幅や同時接続ユーザー数などにより変動する。「将来的には、複数の衛星と同時通信を可能とするMulti Satellite MIMO技術を用いた数百Mbpsの通信、そして5Gや6Gへの対応も可能」と千葉氏は語る。

楽天モバイルは2023年以降に国内での商用化を目指している。

月刊テレコミュニケーション2021年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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