日本ラドウェアは2010年10月29日、ADC(アプリケーション・デリバリー・コントローラー)の仮想化・集約化のための戦略である「VADI」(Virtual Application Delivery Infrastructure)を発表した。なお、ADCとはロードバランサーの発展系で、負荷分散に加えてアプリケーションアクセラレーション、コンテンツ変換などの機能を備えている。
ラドウェア COO イラン・キンライヒ氏 | 日本ラドウェア 代表取締役社長 秋元正義氏 |
ADCを仮想化するメリットは、サーバーの場合と同様だ。1台で複数のADCを稼動させられるため、ハードウェアや電力、設置場所などのコストのほか、管理コストも大幅に削減できる。また、新しいサービスを展開する際、すぐにリソースを確保できることから、ビジネスの俊敏性も向上する。
今回、ラドウェアが仮想化アプリケーションデリバリー戦略「VADI」を構成する具体的な製品として発表したのはまず、専用ハードウェア上で最大28の仮想ADCインスタンスを稼動させることが可能な「ADC-VX」だ。他社からも仮想ADCソリューションは提供されているが、ラドウェア本社COOのイラン・キンライヒ氏が、ADC-VXの特徴として強調したことの1つは次の点。「独自開発のADCハイパーバイザーにより、CPUやメモリなどのリソースだけでなく、ネットワークやマネージメントなどがインスタンスごとに完全に独立した形で運用できる。これまでの仮想ADCソリューションは本当の意味では独立といえず、様々なリスクを想定する必要があった」という。ADC-VXの価格は1500万円(最小構成・インスタンス2つ)~となっている。
仮想ADCインスタンスを完全独立の形で運用できるのが特徴だという。 |
汎用サーバーの仮想インフラ上で動作するソフトウェアADC「Soft ADC」も12月から提供する予定だ。汎用サーバーを利用するため、ベストエフォートで十分なアプリケーションに向くという。さらに、専用の物理ADCで1つの仮想ADCを動かすタイプも提供する。
3タイプの仮想ADCソリューションを提供 |
また、仮想データセンターと仮想ADCを統合的に自動管理するための仕組みも、独自プラグインとAPIにより提供する。現在はVMwareのみへの対応だが、今後マイクロソフト、HP、IBMにも対応していく予定とのことだ。
ADC-VXのターゲットについて日本ラドウェア代表取締役社長の秋元正義氏は「大規模企業、データセンター、そして何よりも通信事業者」と説明。そのうえで「少なくとも負荷分散装置を4~5台入れている企業なら、間違いなくコスト的なメリット、パフォーマンス的なメリットがある。仮に100台のロードバランサーを導入している通信事業者の場合、たった4台で我々の装置はすべてカバーできるため、非常に大きなメリットがある」と語った。
サーバーの仮想化・集約化が進展しているが、これまでハードウェアアプライアンスの形態で提供されてきたADCなどにおいても、仮想化・集約化に大きなメリットがあることは明らかである。こうした仮想化ソリューションが充実してくるのにしたがい、仮想化の波は確実に広がっていくにちがいない。