高い省電力性と広域のエリアカバーを特徴とするIoT無線技術LPWA(Low Power Wide Area)にフォーカスした展示・セミナーイベント「LPWAフェスタ2017」(主催:リックテレコム)が、2017年9月29日、東京・御茶ノ水のソラシティカンファレンスセンターで開催された。
LPWAでは、先行するSigfoxやLoRaWANのビジネスが本格化、新たな技術規格も続々と登場し、動きが活発になってきている。LPWAフェスタ2017は、こうした多彩なLPWA技術、関連商品・ソリューションに直接触れられる場として、活用を検討している企業・自治体やビジネスを推進するアプリケーションベンダー、SIerなどを対象に開かれた。
フェスタでは、LPWAの技術・ビジネスをテーマに計10セッションのセミナーが行われ、21社のブースでは最新の製品・ソリューションが紹介された。
セミナーの様子
ソニーのLPWAサービスは2018年スタート技術・ビジネスセミナーで特に注目度が高かったテーマの1つに、ソニーセミコンダクタソリューションズのセッションで紹介されたソニーの独自LPWA(正式名称は未定)が挙げられる。ソニーの新LPWAはSigfoxやLoRaWANと同じくサブGHz帯の免許不要帯域(日本では920MHz帯)を利用する無線技術だが、ソニーが培ってきたデジタル信号処理、省電力GPS、チューナーなどの技術を活かし、既存のLPWA技術を大きく上回る見通で、100km超の長距離伝送を可能にした点が最大の特徴となっている。
1日2回程度の通信であればボタン電池1個で1年以上稼働可能な低消費電力性、時速100km以上で走行中の車からでもデータを送れる移動性能、都市部でも使える耐ノイズ性能も、セールスポイントだ。
ソニーセミコンダクタソリューションズでは、ソニーがネットワーク設備を構築し、通信サービスとしてユーザーに提供する「パブリック型」と、サービスエリアの外でもユーザーが受信機(基地局)を設置して自営網として運用できるようにする「プライベート型」の2つの提供形態を検討しているという。事業化時期については「来年の立ち上げになると思う」とした。
ソニーでは新LPWAの長距離伝送・省電力性能を活かして、登山者やスキー客などの見守りや、ボートなど海上の安全確保、ライドシェアの自転車の管理、ドローン遠隔操作などのユースケースを想定している。
ソニーセミコンダクタソリューションズのブースには、同社が利用を検討している企業に提供しているPoC用の試験端末や、日本システムウエアのIoTクラウドプラットフォーム「Toami(トアミ)」と新LPWAを連携させて実現した、登山者見守り、気象監視などのアプリケーションが出展されていた。
ソニーの新LPWAのPoC(実証試験)用端末。右側は外付けセンサーの接続が可能なタイプ
もう1つ“日本発”の新たなLPWA規格として関心を集めたものに、スカイリー・ネットワークスのセッションで紹介された「SkWAN」がある
SkWANはスカイリー・ネットワークスが開発したLPWA技術で、①TDMAや周波数ホッピングなどの活用による高い干渉回避性能、②1基地局で6000台以上の子機を収容可能とする高い拡張性、③産業レベルのセキュリティ性能が大きな特徴としている。「LPWAの普及に伴い920MHz帯の免許不要帯域が混雑するリスクがある。SkWANはその解決策になり得る」という。
SkWANはMAC層以上のプロトコル・スタックを規定しており、LoRaWANの無線伝送方式のLoRa、WiSUNやZigBeeで使われているIEEE802.15.4gなど、様々な無線規格(物理層)の上に実装することができる。スカイリー・ネットワークスでは、中でも直接拡散方式(DSSS)を利用する新しい無線規格「IEEE802.15.4k」と組み合わせることで極めて高い妨害波耐性を持つLPWAシステムを実現できると見ており、IEEE802.15.4k対応の無線LSIを製品化しているラピスセミコンダクタなどと協力して普及を目指していく考えだ。
IEEE802.15.4kとSigfoxに対応するラピスセミコンダクタの無線LSI