端末やサービスがほぼ横並びになる一方、従来ドコモが強みとしてきたネットワークについても、LTEになって他社も急速に強化している。「各社が追いつき追い越せという中で、他社に負けてはいないが、勝つことも難しくなっています」と眞藤氏は述べる。そうした状況下で、ドコモ法人がこれからの差別化ポイントとして重要視しているのが「営業力」だ。
他社が「安さ」を武器にして法人営業で攻勢をかけている中で、ドコモは「安さだけでは長続きしない。我々の方が高い場合があるかもしれないが、その対価として、安心して長期にわたりお付き合いいただける関係を築いていきたい。その方がお客様の事業に本当に貢献できる」(松木氏)と、単なる安売り合戦からは一線を画す考えだ。
例えばネットワークについては、電波状況を測定するオリジナルのアプリ「ドコモシグナルチェッカー」を営業担当者が持ち歩き、訪問先企業の建物における電波状況をすぐにチェックできる態勢を取る。
法人営業の担当者はオリジナルのアプリ「ドコモシグナルチェッカー」を持ち歩いており、訪問先の電波状況を即座に測定できる |
電波状況が良くない場合には、スマートフォンから担当部署にメールで問い合わせ、商談中に原因と改善策を説明することができる。こうした細やかな対応を積極的に進めることで信頼関係の構築につながるという。
とはいえ、特に300回線以下の中小企業のところでは、他社の攻勢の影響が明確に表れている。そこで眞藤氏は自ら率先して、今までドコモと契約したことがない企業や、過去にドコモから他社に移行した企業を重点的に回っているという。初めて訪問した企業からは「うちにもドコモの担当者が来てくれた」と驚かれることもある。また、現在は他キャリアの回線を利用している企業からは、逆に悩みの相談を持ち掛けられることもあるという。
他社の中には純増数を重視するあまり、ともすれば“売りっぱなし”の営業展開になっている面があることを把握している。ドコモがこれまでカバーしきれていなかった企業やかつての顧客を丁寧に回り、不満や疑問に耳を傾けることで、新たな関係を築くことも可能になるというのだ。
今回の大規模な組織改革は、「アフターフォロー」だけでなく、そうした「ビフォアフォロー」を強化する狙いもあるという。