「Mobile World Congress(MWC)2014」が今年もスペイン・バルセロナで2月24日から4日間にわたって開かれた。201カ国から昨年を18%上回る過去最高の8万5000人が参加し、1800社以上の企業の出展でにぎわった。一般にMWCは「世界最大の携帯電話見本市」と呼ばれるが、その呼称を超えるダイナミックな展開を見せ始めた。
MWC2014から見えてきた世界の通信業界の新たな動きを整理していきたい。
第一の特徴は、固定・移動を超えて通信業界が2020年を区切りとするネットワークの次の大きな変革に向かって動き始めている点だ。第二は、スマートフォン/タブレット時代が一段と進化し、スマートフォン/タブレット/ウェアラブル時代に突入することが明確になったことだ。
三番目に、モバイル/ワイヤレスと産業/社会との連携がますます進み、自動車、医療、建設などに絡むM2M、ビッグデータ、コネクトシティ、スマートグリッド、モバイルヘルスなど広義のIoT(Internet of Things)の多様化の動きがますます加速化しているということだ。
今回は、第一の特徴をみていく。
5Gが前面に
会場を新しい巨大イベント施設に移して2年目。今年は、今後の市場の方向性を決めるキーワードが打ち出された。それは「ネットワーク2020」だ。
日本人として一瞬、「東京オリンピックをGSMAが応援してくれるのか」と“誤解”した。日本はすでに「オリンピックの年には5Gを世界に先駆けてスタートし、世界の人々に日本のネットワークの最先端技術を見せたい」(総務省)という決意を示しているので、多少我田引水だが、まったくの的外れではないかもしれない。
ネットワーク2020とは、5G(第5世代移動通信システム)を軸にしたネットワークの大変革で新たなネットワーク社会をグローバルに切り開こう、その区切りとして2020年をターゲットにしようという意味合いだ。
もちろん、5Gはまだ厳密に定義されているわけではなく、標準化作業も「来年2015年から始まるだろう」という暗黙の前提があるにすぎない。「2020年5G開始」も決定されているわけではないが、それに向かって進もうという方向性はMWC2014で極めて明確な潮流となったといえる。
5Gについては、エリクソン、ノキアソリューションズ&ネットワークス(NSN)、ファーウェイ、NTTドコモなどモバイル業界の主要なリーダーがことごとく、ブースエントランスなど最も目立つ場所で打ち出しているのが象徴的だった。それぐらいシンボリックなキーワードとなった。5Gの定義は正確にはまだ決まっていないが、それぞれが目指す方向性を明確に打ち出していたのが印象的だった。
5Gではまず何より、現在とは比べものにならないほど巨大なデータトラフィックへの対応が必要とされる。しかも、一方ではスマートフォンのトラフィックに代表される莫大なデータ爆発、他方ではM2Mに代表される少量だが膨大な数のデバイスのトラフィックと、極端に性格の異なるトラフィック特性への対応が求められることになる。さらに、今後はゲーム、テレビ、家電機器、クルマ、動物など、あらゆるものがネットワークにつながる「500億デバイス時代」が現実のものになっていく。こうした多様極まりない、莫大なトラフィックを、どうスムーズに処理していくのかが、大きな課題である。
ドコモは、(1)現在の1000倍の超大容量、(2)現在の10~100倍の超高速通信、(3)現在の100倍の同時接続デバイス数、(4)現在の3分の1にあたる遅延1ms以下の高品質ネットワーク、(5)エネルギーセーブとコスト削減のネットワークと端末と5項目の目安を設定している。
ドコモの5Gの5つの定義
ファーウェイもそれぞれについて、(1)1000倍、(2)10Gbps、(3)100億デバイス接続と考えていると発表した。エリクソンやNSNも、5Gは、従来の技術を複合的に組み合わせると同時に、新たなテクノロジーの開発も必要になると発表した。
ノキアソリューションズ&ネットワークス(NSN)の5Gのコンセプト
また、5Gをにらみながら、いよいよこれから本格化する4Gに向けての取り組み、とりわけキーテクノロジーとなるLTE-Advancedの最新の取り組みが競って展示されたのもMWC2014の特徴だ。LTE-Advancedは、キャリアアグリゲーション、HetNet、CoMPなどが構成要素となるが、その実用化に向けての各社の取り組み、そして基地局小型化、高性能化に向けた最新の取り組みと製品群が展示された。