ICT技術解説[第5回]超話題の「iBeacon」を徹底解説――O2Oの本命となるか!?

アップルがiOS 7から搭載した新機能「iBeacon」に注目が集まっている。スマートデバイスユーザーの位置情報を活用してクーポンをプッシュ発信できるなど、O2O用の技術として期待が高まるiBeaconの仕組みや他の技術との違い、実用化状況などを徹底解説する。

3.iBeaconの仕組み

iBeaconは、GPSのように緯度経度という絶対座標を計測する技術ではない。Beacon端末の発信する電波を受信したかどうか――すなわち、ユーザーがBeacon端末に近接したかどうかにより、擬似的に位置を把握する。

店舗などに設置するBeacon端末が発信しているのは、そのBeacon端末のID情報を含んだ信号である。Beacon端末は放送のように信号を常時発信しており、それに対応するiBeaconアプリがインストールされたデバイスが信号を受信すると、これをトリガーにアプリ側で処理が実行される。

Beacon端末が発信できるID情報は、128ビットの暗号化されたUUID(universally unique identifier)、16ビットの整数であるメジャー値とマイナー値の3種類ある。メジャー値とマイナー値はオプションだ。

Aストアという多店舗チェーンでiBeaconサービスを展開するケースを想定した場合、例えばUUIDは「AストアのiBeaconサービスであること」、メジャー値は「支店ID」、マイナー値は「Beacon端末を設置した棚のID」といったように設定する。3種類のID情報が用意されていることで、階層的にBeacon端末のID情報を管理できる。

iOSデバイスにインストールされたiBeaconアプリは、Beacon端末から発信されたID情報により、ユーザーの現在地を特定する。具体的にはiBeaconでは、Beacon端末の電波の受信領域(ビーコン領域)への「進入」、そしてビーコン領域からの「退出」をトリガーに、iBeaconアプリに対してアラートを生成することが可能だ。iBeaconアプリは、このアラートとID情報を元に、情報のプッシュ配信などのアクションを実行する。

距離情報の取得
また、ビーコン領域への進入/退出だけではなく、Beacon端末との距離情報も取得できる。Beacon端末から発信されている信号の電波強度(rssi)から推測した、近接度(proximity)の値がiBeaconアプリに提供され、その近接度に応じたアクションを設定可能だ。proximityの値は、Immediate(すぐ近く)、Near(近い)、Far(遠い)、Unknown(不明)の4種類ある。

さらに、m単位での距離(accuracy)も取得できるが、計測に時間がかかるといった課題も報告されている。

iBeaconの動作環境
iBeaconを使った情報サービスを提供あるいは利用するには、次のような動作環境が必要になる。

・サービス提供側(発信側)……Bluetooth Low Energy対応のBeacon端末
iOS 7搭載のiPhoneなどもBeacon端末として使えるが、Beacon端末は発信機として壁や天井などに取り付けて使用することもあり、サードパーティから発売されている廉価な専用モジュールを利用するのが一般的だ。

例えば、Estimote社のEstimote Beaconは、電池で2年間駆動、10cm~60mの範囲に電波を届けられる。また、ちょうど固形石鹸くらいの大きさで電池寿命が5年というshopkick社のshopbeacon、スマートフォンから簡単にBeacon情報を書き換えることができるアプリックスのBM1などがある。

shopkick社のBeaconモジュール
shopkick社のBeaconモジュール

なお、国内で海外製のBeaconモジュールを使用する場合、日本の電波法の技術基準適合証明が必要になるので注意したい。

・サービス利用側(受信側)・・・iOS 7搭載デバイスとBeaconを検知するアプリ
iBeaconを使ったサービスを利用するには、iOS 7以降がインストールされているデバイスで、Bluetooth機能をオンにしていることが必要だ。iOS 7には、iPhone 4s以降、iPad(3rd generation)以降、iPad mini以降、iPod touch(5th generation)以降の機種が対応している。

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