ユニファイドコミュニケーション(UC)の導入形態が変わり始めている。
UCは、その効果がわかりにくいことが最大の課題だ。かつては、PBXベンダーが「電話のIP化」を入り口にUCの効果を訴求したが、電話中心の提案とユーザーのニーズとの間には大きな隔たりがあった。
だがここへ来て、ベンダーのUC提案とともに、ユーザーの評価も変わりつつある。
UCの方向性が大きく変わったのは、2008~09年だ。かねてよりService Oriented Architecture(SOA)を採用したUCプラットフォームを提供してきたシスコシステムズに続き、NECが09年、UCミドルウェア「UNIVERGE Sphericall」の国内出荷を開始。IP-PBX中心から、多様なコミュニケーションツールと業務アプリケーションを連携するプラットフォームを核としたUC提案へと、大きく舵を切った。
もう1つ重要な動きが、メールやIM、グループウェアなどで大きなシェアを持つ、マイクロソフトとIBMがUCに注力し始めたことだ。マイクロソフトのOffce Commnications Server 2007、IBMのLotus Sametime Unified Telephonyは複数ベンダーのPBXとの連携を実現。マイクロソフトは、電話も含めたコミュニケーションツールをすべてソフトウェアで提供するというビジョンの下、電話機能を強化したOCS R2の提供も09年に開始した。
これらにより、ユーザーにとってUCは身近なものとなった。電話システムの入れ替えという大手術を経ることなくUCが導入可能になったのだ。また、「コミュニケーションツールの統合」だけでなく、コミュニケーション基盤と業務アプリケーションとの連携も、実現が容易になった。
こうした変化は、ユーザーの導入・検討状況にも現れ始めている。導入形態が柔軟になったことで、UC導入の成否の鍵を握る、投資対効果がより把握しやすくなったのだ。
7つの「ユニファイドコミュニケーションの入り口」とは?
「すべてシスコの製品に置き換えるという形態から、既存のコミュニケーションツールと連携する形で当社のソリューションを導入したいという要望が増えてきた。従来のように『まず電話から』ではなく、UCのエントリーポイントが増えてきているのを感じている」
そう語るのは、シスコシステムズ・エンタープライズマーケティング・マーケティングマネージャーの佐々木明夫氏だ。
同氏のいう「UCのエントリーポイント」とは図表に示した7つ。ユーザー企業の業務全般のさまざまな場所でUCが使われるケースが実際に増えているという。例えば、出張費削減を切り口にテレビ会議/Web会議を導入したり、モバイルワークの実現のためにスマートフォンを導入し、社内のメールやグループウェアを利用するなど、効果の出しやすいポイントを入り口に、IPコミュニケーションの活用領域が広がり始めている。
図表 ユニファイドコミュニケーションの7つのエントリーポイント |
このエントリーポイントを融合していくのが次のフェーズとなるが、そこで重要となるのが次の2点だ。