オフィスから大半のテストが可能――エリクソンが横浜に新試験環境開設

エリクソン・ジャパンが4月に運用を開始した新しいネットワーク試験環境は、作業のほとんどをエンジニアがオフィスのPCなどで行えるようにしたもの。省スペースと作業の効率の向上が狙いだ。

エリクソン・ジャパンは2012年5月21日、試験・開発施設「エリクソン・ジャパン・テスト・エンバイロンメント」の開設記念式典を行い、同施設を報道関係者に公開した。

同社は昨年9月に技術部門の拠点となっていた新横浜の事業所を横浜市・みなとみらい地区の「横浜オフィス」に移転、これに伴い新横浜の試験施設の新拠点への移設作業を進めてきた。式典・施設公開はこの移転作業が4月末に完了したことを受けて行われた。

エリクソン・ジャパン・テスト・エンバイロンメントは、エリクソンが日本の通信キャリアに製品を納入する際の事前試験などを行うための施設である。LTE/W-CDMAの無線ネットワーク、コアネットワーク、OSS/BSSからアプリケーションサーバーまで、キャリアのネットワークと同様の環境が構築されており、端末やソフトウェアまで含めたエンド・ツー・エンドでの試験が可能だ。新設備の移転オープンに伴い、スウェーデン本国の開発組織の一部を引き継ぎ、ソフトウェア製品の事前検証なども日本で手掛けるようになる。

施設の面積は、横浜オフィスが入っているビル(横浜ブルーアベニュー)の1フロアの半分強程度と決して広くはない。マシンルームには、データセンターと同等のサーバー設備や各種通信装置のほか、基地局装置を収容したシールドルームが3室設置されているが、空調などの工夫により省スペース化・省電力化が図られている。試験などを行うスペースも、会議室タイプのデモルームが2室(仕切りを外して1室としても利用可能)にフリーアドレスの作業卓が10席程度、無線端末の試験に用いられるシールドルームが3室とコンパクトにまとめられている。これは、同社のエンジニアが、社内ネットワークを介してオフィスなどから試験環境のほとんどの機能を利用できるようになっているためだ。試験・作業に用いるアプリケーションは、すべてサーバーに格納されており、エンジニアはどこにいても同じ環境で作業が行える。

エリクソン・ジャパン・テスト・エンバイロンメント内の試験スペース

試験スペースの利用は、電波を発する端末などの試験の他は、デモンストレーションや会議、共同作業などに限定され、ソフトウェアの検証などはほとんど自席で行われる。ネットによる利用を含め試験環境の利用はすべて予約制で、PCや施設のタッチパネルなどでプロジェクトや予約状況が一覧されるようになっている。

試験スペースには、エリクソンのコーポレートデザインのポリシーに合わせたデザインが施されており、試験施設だけでなくショールームに近い性格付けもなされている。これは、この設備がキャリアを交えた最終チェックなどに使われることが多いためだ。フリーアドレスであるため、デスクトップPCなどの情報設備はほとんど置かれていない。エリクソンでは「エンジニア1000名がこの設備を利用するので、1人あたりの試験施設のスペースは0.1~0.2平方メートル程と、他の拠点と比べても極めて効率的なものとなっている」という。

端末などの試験を行うためのシールドルーム

またこの試験環境では、ネットワーク経由で世界のR&D拠点のリソースを使った試験を行うことも可能となっており、今回はその実例として、上海の拠点に設置されたIMSとEPCコアを利用して、LTE上でのIP電話(VoLTE)のデモンストレーションが行われた。

エリクソンでは、エリクソン・ジャパン・テスト・エンバイロンメントの機能を社内だけでなく、端末メーカーが相互接続試験を行う場合などにも提供していく考えだという。開設記念式典で挨拶した、エリクソン・ジャパンのヤン・シグネル社長は「日本は新しい技術・機能が世界で最初に使われる市場。ここで我々の製品を心配のない形で、提供していくためにこの設備が大きな役割を果たす。その成果は世界市場のビジネスにも波及していく」と、新試験環境の意議を語った。

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