ケーススタディ【筑波サーキット】通信システムをフルIP化、一斉通報にソフトフォンも活用

コース内の監視ポストと管制塔を結ぶ通信システムをフルIP化した筑波サーキット。ソフトフォンを活用した一斉指令システムの新規導入などにより、指揮命令・情報伝達の効率化に成功した。

新ネットワークの物理配線は、光ケーブルをベースとしつつ、コントロールタワーから遠く、かつコースをまたがるポストとの通信には25GHzの無線を活用。コスト低減と敷設工事の効率化、さらに障害発生リスクの軽減にもつながった。08年12月に工事を開始し、09年4月より稼動した。

図表 筑波サーキットのIP電話システム概要(クリックで拡大)
筑波サーキット内のIP電話システム概要

タッチパネル式ソフトフォンで全ポストへ指令

「変わらぬ使い勝手」が最重要視された今回の新システムだが、もちろん、売りはそれだけではない。「レース毎に訪れるオフィシャルスタッフにも大変好評」と濱野氏が満足気に語るのが、タッチパネル式ディスプレイとソフトフォンを組み合わせて作られた一斉指令システムだ。

コントロールタワーにある中央管制室(左)。2台のタッチパネル式モニタでソフトフォンを使用する(右)

コースレイアウト上に各コーナーポストを示すボタンが置かれており、ワンタッチで電話発信が可能。着信・通話中といったステータスもボタン色の変化で知らせる。複数ポストからの着信に応対し一斉指示を送る場合にも、1画面内ですべての状況を把握し発着信の操作ができる。

ソフトフォン
ソフトフォンの拡大写真。コースレイアウト上の番号ボタンを押すと、その管理ポストに電話がかけられる。右端にある枠の中から複数箇所を選ぶと一斉通報も可能

これまで半年、レースの度に異なるオペレーターがこのシステムを使用してきたが、濱野氏には『使い勝手がいい』『安心してトラブルに対応できる』との反応が寄せられているという。

この一斉指令システムに留まらず、新設のIPネットワークを活用したサービスをさらに拡充していくのが、濱野氏の今後の仕事だ。前述したように、コース上やピット内の映像を場内各所のモニターに配信したり、利用客のノートPCに無線LAN経由でラップタイムを配信したりといったサービスを視野に入れる。また、インターネット経由でより多くの人にサーキットの魅力を伝える集客サービスも展開したい考えだ。

残念ながら筑波サーキットは、通信キャリアの局舎から遠いためADSLが利用できず、現在もまだブロードバンドが未整備だ。「この環境さえ改善すれば、すぐにでも新たなお客様を呼び寄せるためのアイデアを実行したい」と濱野氏は語る。新ネットワークが真価を発揮するのは、まだまだこれからのようだ。

月刊テレコミュニケーション2009年11月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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