Microsoft Lyncで変わるリアルタイムコミュニケーション [第5回]日本ユニシスが語る「マイクロソフトの新UC基盤“Lync”はどこが進化したのか」

マイクロソフトの新しいユニファイドコミュニケーション(UC)基盤「Microsoft Lync 2010」を徹底解説する本連載。第5回は、古くからマイクロソフトのUCソリューションに深く関わってきた日本ユニシスの牧野陽一氏に、従来と比べてLyncはどこが進化したのかを聞いた。

「PBXをなくせます」と説明すると途端に反応が変わる

牧野 電話関連機能の強化も、Lyncの大切なトピックです。サバイバブルブランチアプライアンス(SBA)が登場し、可用性が大きく向上しました。従来のOCSですと、WANに障害が起きると、支店では内線だけでなく外線の発着信も行えなくなりました。しかし、SBAを利用すれば、WAN障害時でも公衆網に抜けることで、外線の発着信は可能です。このほか、同時通話数を制限・制御して通話品質を担保するコールアドミッションコントロール機能の搭載など、信頼性は大幅に向上しています。

Lyncを電話として本格的に活用している大規模事例はまだありませんから、懐疑的なユーザー企業も少なくないと思いますが、私自身は他のIPテレフォニーベンダーと比べても、すでに信頼性はかなりの高水準に達していると考えています。

――パーク保留など、日本特有の電話文化にも対応しましたね。

牧野 昔は発着信くらいしかありませんでしたが、徐々に機能が拡充されていき、Lyncではパーク保留にまで対応しました。電話機が充実したことも重要ですね。USBフォンなどのデバイスの種類は以前から多かったのですが、PCとの接続なしにスタンドアロンで動く固定電話機となると、OCSでは1モデルしかありませんでした。しかも、日本の一般的な電話機と比較すると倍近くサイズがあって、日本のオフィスには適していませんでした。それがLyncの場合、すでに固定電話機が7モデルぐらい用意されています。日本のオフィス向きのコンパクトなものもありますし、標準価格も200ドル前後からとリーズナブルなのがいいですね。

ポリコムのLync専用IP電話機「Polycom CX500」
ポリコムのLync専用IP電話機「Polycom CX500」。日本における知名度も高いポリコムが電話機メーカーとして名を連ねているのも大きいと牧野氏は話す

――やはり電話機は大切ですか。

牧野 ソフトフォンだけではやはり駄目ですね。電話として本格的に使う場合には、例えばオフィスの“島”ごとに1つずつなど、固定電話機も必要とされるユーザー企業がほとんどです。OCSも電話の機能そのものはだいぶ揃っていたのですが、良い電話機がなかったのが問題でした。

――電話機能が充実したことで、既存PBXをLyncでリプレースしていくというマイクロソフトが描くシナリオも現実的になってきたのではないですか。

牧野 はい、かなり提案しやすい状況になっています。ただ、まだまだLyncでPBXをリプレースできるということに気付かれていないユーザー企業が多いのも事実です。この点については、マイクロソフトさんにもっと頑張って宣伝してもらいたいですね。

――ユーザー企業の多くは、電話とは別のコミュニケーションツールとしてしかOCS/Lyncを認識していないということですか。

牧野 そういう視点でしか捉えていないユーザー企業は多いです。ですから「PBXをなくせます」と説明すると、「えっ!?」と途端に反応が変わります。食いついてきますね。

――電話インフラをLyncに統合できるとなれば、相当のコストメリットが期待できますからね。それでは今後、LyncによるPBXのリプレースはどんどん進んでいきそうですか

牧野 PBXベンダーも既存顧客を守るのに当然必死ですから、そう簡単ではないでしょう。また、我々がこれまでお付き合いしてきた多くは情報システム部門であって、PBXを所管されている総務部門とはあまりお付き合いがありません。総務部門にどうアプローチしていくかという問題も残っています。とはいえ、LCSの時代から取り組んできた私からすれば、「遂にここまで来た」という感慨はありますね。

あとコストの観点では、Hyper-Vによる仮想化にLyncで正式対応した点も重要です。IM・プレゼンスをいきなり全社展開するユーザー企業は少ないです。まずは一部の部門だけなど、小さく始めるケースが多いわけですが、そうした場合でもOCS時代はいくつも物理サーバーを立てる必要がありました。しかし、仮想化に対応したことで、物理サーバー1台でスモールスタートできるようになりました。

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