「啓蒙期はもう済んだ。2018年から大きく変わった」
顧客企業のSD-WAN導入状況について、「Singtel ConnectPlus SD-WAN」を提供するシンガポールテレコム(シングテル)カスタマーソリューションズ シニアソリューションズマネージャーの芳村淳氏はこう語る。ここに来て、本番稼働する企業が次々と出てきているという。
背景にあるのは、企業ITのクラウド化だ。これまでWAN内で閉じていた業務アプリケーションのトラフィックがインターネット/クラウド向けに変化。データ量の増大も相まって、多くの企業がネットワークの見直しを迫られている。
すぐさま大規模なWAN改修を実施しないまでも、SD-WANを使えばトラフィックを可視化できるため「ネットワークの現状を把握するツールとして使う企業も多い」と話すのは、シングテルでソリューションズマネージャーを務める飯塚陽一氏だ。回線の帯域増強や構成変更を検討するに当たって、「そのきっかけとしてSDWANを捉えている」という。
日本ではなかなか普及の兆しが見えなかったSD-WANだが、ようやく潮目が変わりそうだ。要因は大きく3つある。1つは、「クラウド接続の最適化」というSD-WANの使い方が定着してきたこと。そして、SD-WANの提供形態の変化と多機能化である。
SD-WANのユースケース ブレイクアウトが大人気SD-WAN普及の火付け役となっているのが「ローカルブレイクアウト」のニーズだ。各拠点からインターネットへの接続を本社/データセンターに集約する従来のネットワーク構成を改め、拠点から直接インターネットへ接続するケースが増えている。
理由は、クラウド向けのトラフィック/セッション数が急増し、センター拠点のプロキシサーバーやファイアウォール、インターネット回線が逼迫しているためだ。「センター集中型が破綻し、大手企業もSD-WANに注目し始めた」と語るのは、「NUROセキュリティSD-WAN」サービスを提供するソニービズネットワークス(SBN)の執行役員で事業企画本部長を務める後藤勉氏だ。「ブレイクアウトの案件はとにかく多い」という。
SD-WANのアプリ可視化/トラフィック制御機能は、このブレイクアウトを行うのに適している。拠点に設置するエッジ装置でトラフィックを識別。図表のようにオフロードすることで、通常のインターネット接続経路の逼迫を避けられる。
図表 ローカルブレイクアウトのイメージ