――Obigoの事業とこれまでの実績について教えてください。
ハン 我々は1997年から、モバイル向けのインターネットサービスとソフトウェア製品を提供してきました。現在はWebサービス分野に注力しており、特にHTML5にいち早く取り組んできています。自動車やIPTV、スマートフォン向けのHTML5開発プラットフォームやWebアプリケーションサービスの事業を展開しています。
日本では2011年からモバイル向けソフトウェアを提供しており、NTTドコモのスマートフォン向け放送サービス「NOTTV」に我々のモバイルブラウザが採用されています。また、自動車に搭載される情報通信端末向けサービスを成長分野の1つに据えて重点的に取り組んでいます。
――そうした領域でビジネスを開拓していく上での強みは何ですか。
ハン HTML5関連の開発力とノウハウです。HTML5は動画や音声を直接扱えるという利点があり、さらに、HTML5で書いたアプリケーションならば修正なしか最小限の変更で多様なOS・機種で使えるメリットもあります。クルマとスマートフォンなど異なる環境同士をつなぎ、コンテンツ・サービスを流通させるのに最適なプラットフォームなのです。
――先頃、車載端末向けのWebアプリケーションフレームワーク「OAF(Obigo App Framework)」を日本国内でも販売すると発表しました。これはどのようなものですか。
ハン HTML5をベースとした開発環境を提供するもので、端末やOSに依存しない包括的なテレマティクスサービス提供基盤を構築できます。自動車向けにクラウドサービスを提供しようとする通信事業者やコンテンツプロバイダーにとって最適なソリューションであると自負しています。すでにBMW、ヒュンダイ、キアで採用されています。
クルマに搭載するヘッドユニットから直接クラウドに接続することも可能ですが、iPhoneやAndroid端末をつないで、ヘッドユニット(下写真)のGUIからスマホ内のコンテンツを操作したり、スマホ経由でナビゲーションやSNS等を利用することもできます。このクルマとスマホ、コンテンツプロバイダーのサーバーを簡単につなげる仕組み「App Connector」こそが、実は我々の一番の特徴と言えます。
Obigo 代表取締役兼CEOのデビット・ハン氏。ヘッドユニット(左)とスマートフォンをUSBケーブルでつなぐだけで即座に連携し、ヘッドユニット画面からスマホを操作できる |
車載インフォテインメントの標準化活動をリード
――App Connector の仕組みはどう実現しているのですか。
ハン キーとなるのはAPIです。クルマと車外環境、外部機器とを連携させる車載インフォテインメントシステム(IVI:In-Vehicle Infotainment)の標準仕様は、非営利団体「GENIVI Alliance」が策定していますが、我々はそのHTML5に関する仕様作成に貢献してきました。
このオープンな仕様に基いた仕組みを提供することで、誰でもビジネスが行えるエコシステムができます。
――国内での販売を伸ばすための施策として何を行いますか。
ハン 我々は日本の文化、お客様のニーズもよく理解しています。日本でビジネスを成功させるためにはローカルな技術サポートが何よりも重要です。そこで、今年4月に技術サポートを行うテックセンターを東京都内に開設しました。また、8月には、エミュレータ環境におけるテストとデバッキングに加えて、実機上でのテスト環境も行うQAセンターを併設します。
こうした体制を整え、カーコネクティビティの分野はもちろん、家電や産業機器分野にもビジネスの領域を広げていきたいと考えています。