日本ヒューレット・パッカードは2011年10月20日、新しいネットワーク製品群を発表した。日本HPは今年7月に新しいネットワークアーキテクチャ「HP FlexNetwork Architecture」を発表したが、「それからたった3カ月で、これだけの新製品を打ち出すことができた。HPの開発ピッチがネットワーク専業ベンダーに負けていないと自負できる状況になっている」と同社エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 HPネットワーク事業本部 事業本部長の大木聡氏は話した。
NW管理者とサーバー管理者の責任分解点を明確化
今回発表された新製品は、データセンター向け、キャンパス向け、ブランチ向け、管理ツールと、FlexNetworkを構成する4分野すべてにまたがるが、一番のコアとして大木氏が紹介したのはデータセンター向けのところだ。「仮想化データセンターにふさわしいフラットネットワークを簡単に実現できる“現実解”を提供すると言い続けてきたが、ついに製品として具現化された。まだ改善の余地はあると思うが、現状のソリューションでも相当数のお客様は満足いただけると考えている」という。
データセンター向けに投入されたのはTop of Rack(ToR)スイッチ2機種とコアスイッチ1機種だ。ToRスイッチの1つめは、GbEポート×48と10GbEポート×4をサポートする「HP A5830」で、最大の特徴は1GBの大容量パケットバッファの搭載である。「予測不可能なバーストトラフィックの発生時の輻輳を避けることができる」と大木氏は説明した。また、HP独自のネットワーク仮想化技術である「IRF」(Intelligent Resilient Framework)にも対応、最大4台までのスイッチを論理的に1つのスイッチとして扱える。A5830の出荷開始日は12月の予定で、価格は158万円~。
A5830の特徴 |
もう1つのToRスイッチは「HP A5900」だ。10GbEポート×48と40GbEポート×4を備えるモデルと、10GbE×24のモデルの2種類を用意する。どちらも最大4台のIRFに対応。さらにVEPAとTRILLをサポートしている。
A5900の特徴 |
VEPA(Virtual Ethernet Port Aggregator)は、仮想サーバー環境において仮想スイッチで行っている処理を、外部の物理スイッチにオフロードするための仕様で、IEEE802.1Qbgとして標準化作業が進められている。「先行してVEPA対応スイッチを出しているベンダーもあるが、今までのところ、サーバーの追加投資をしたほうがはるかに安く済む。しかしながら、標準化動向にも収まりがついてきたことから、IEEEのワーキンググループをリードしてきた我々もVEPAを実装していくことにした」と大木氏は説明。そのうえでVEPAのメリットについて、「ネットワーク管理者とサーバー管理者の責任分解点を、仮想マシン以前のような状態に戻すことができる」と語った。
VEPAに対応し、仮想スイッチの処理を外部のハードウェアスイッチにオフロードすることが可能に |
また、TRILLにも対応したが、HPのアプローチは「IRFとTRILLのハイブリッドモデル」というものだ。1万サーバーぐらいまでのレイヤ2ネットワークについてはIRFを活用。それ以上の大規模データセンターについてはTRILL、さらにはSPBを組み合わせるというのが、HPの描く仮想データセンター向けフラットレイヤ2ネットワークの姿だ。TRILLやSPBなどの「エマージングなテクノロジー」ではなく、買収した3Comが開発してから6年が経過する「枯れた技術」であるIRFを中核としているのがHPの特色だという。「ここは他のベンダーと大きく違うところなので、ぜひ覚えていただきたい」(大木氏)。A5900の出荷は2012年春の予定で、価格は未定となっている。
IRFとTRILLのハイブリッドモデルを打ち出すHP |
最後のデータセンター向け新製品は、コアスイッチの「HP A12500」である。IRFによって1つの論理シャーシにできる数が従来の2台から4台になった。