KDDIは2011年3月1日、Android搭載デバイス向けセキュアプラットフォームを開発する米Three Laws of Mobility社(以下、3LM社)との提携を発表した。KDDIでは今回の合意に基づき、3LM社のプラットフォームを採用した法人向けセキュリティ管理サービスのトライアルを8月に開始、そして10月から本格提供を始める計画だ。
KDDI取締役執行役員常務 ソリューション事業本部長の石川雄三氏は「法人に安心してAndroidデバイスを使ってもらうにはセキュリティの問題を解決しなくてはいけないが、3LM社はAndroidについては世界有数の技術力がある会社。法人のお客様から私たちに寄せられているすべての課題を解決できるケイパビリティを持っている」と語り、KDDIの法人向けAndroidソリューションにとって、3LM社との提携は大きな価値を生み出すとアピールした。
米3LM社との提携により、KDDIはさらに高セキュリティなAndroidの利用環境を提供できるという |
昨年7月に設立された3LM社は買収により現在ではモトローラ・モビリティの100%子会社となっているが、HTC、ソニー・エリクソン、シャープ、パンテックともパートナーシップを締結。さらに他のメーカー数社との提携も近く発表予定と、「Androidのメーカーのなかではスタンダードになっている」と同社CEOのトム・モス氏は説明した。親会社であるモトローラ・モビリティ以外のメーカーとも積極的に協力関係を築いているのは、「Androidが法人で成功するためには、1つの法人向けプラットフォームである必要がある。1つのメーカーだけではそれほどの成功は収められない」との考えからだ。Androidデバイス用の法人向けセキュアプラットフォームのデファクトスタンダードを担おうというのが、3LM社の戦略なのである。
すでにHTC、ソニー・エリクソン、モトローラ、シャープ、パンテックの5社が3LM社のパートナーになっている。また近日、新たなパートナーの発表が予定されているとのこと |
3LM社のソリューションの大きな特徴として挙げられるのは、アプリケーションレベルではなく、OSレベルでセキュリティ向上を図っていることだ。そのため、より高いセキュリティを実現できるという。OSに手を加えるとなると、アプリケーションの互換性が気にかかるが、これについてモスCEOは「互換性は100%守れる。つまり、Android Marketなどで入手した第三者のアプリケーションはすべて使える」とした。
KDDIが8月から始めるサービスの内容だが、同社ソリューション商品企画本部 モバイル商品企画部長の中島昭浩氏によれば、Androidデバイスが抱えるセキュリティリスクを包括的にカバーするものになるようだ。中島氏はまず、Androidデバイスを利用するうえでのリスクを「不正利用の脅威」「データ通信時の脅威」「情報漏洩の脅威」の3つに整理。これらすべてのリスクへの対策を提供するとした。
不正利用の脅威、データ通信時の脅威、情報漏洩の脅威への対策を提供 |
不正利用の脅威については、IT管理者がAndroidデバイスをしっかり管理できる環境を提供する。具体的には、パスワードポリシーの設定やデバイスの利用制限、アプリケーション配信などに関して、IT管理者がリモートで制御できる機能などだ。端末の制御はWebコンソール画面から行え、またExchangeサーバーやActive Directory、LDAPとの連携にも対応する。
セキュアなイントラアクセスについては、「KDDI Wide Area Virtual Switch」など同社のネットワークサービスと連携することで、安心・安全なアクセスを提供するという。
情報漏洩の脅威については、OSの一部をカスタマイズし、OSレベルでデータの暗号化を図ることなどにより、盗難・紛失対策を行う。例えば、ルート権限を獲られた場合でも、保存されたデータを読めなくすることができるという。
KDDIが提供するAndroid向けセキュリティ管理サービスの特長 |
なお、KDDIはすでに「リモートロック for IS series」や「ビジネス便利パック for Android」などのAndroid向けセキュリティサービスも発表しているが、「最終的には今回の3LM社のサービスのほうへ統合を図っていく」(中島氏)方針とのことだ。
3LM社との提携により提供するサービスは、KDDIのAndroid向けセキュリティサービスの“最終形”という位置づけのとのこと |
Androidというと競合と比べてセキュリティが脆弱というイメージがあるが、モスCEOは「Androidは一番セキュアなモバイルOSになる」という。ソースコードがオープンになっており、3LM社のように誰もが無料で自由にAndroidのセキュリティを高めていけるというのが理由だ。
コンシューマ市場はすでにスマートフォン/タブレット一色の様相だが、法人市場ではセキュリティ懸念もあって、まだまだ今からの状況である。石川常務はKDDIのAndroidデバイスと3LM社のソリューションについて「最強の組み合わせ」と自信を見せたが、果たしてこの“最強タッグ”は法人市場の前に立ちはだかる壁を崩すことができるのか――。詳細なサービス内容や料金については、また改めて発表を行うという。