日本IBMは2010年7月30日、「IBM Lotus Sametime Unified Telephony 8」(以下、SUT)の提供を開始した。SUTは、インスタントメッセージ(IM)、プレゼンス、会議の3つの機能を持つ同社のリアルタイムコラボレーション製品「IBM Lotus Sametime」と電話システムとの統合を可能にする製品である。
一部企業への試験導入は行われてきたものの、SUTが正式に市場に投入されるのは今回が初めてとなる。「Unified Communication & Collaboration」(UC2)というコンセプトを掲げ、IT側から企業向けコラボレーション分野にアプローチしてきたIBMだが、これまで欠けていたのがPBXとの連携部分だった。しかし、ついに最後の役者も出揃った。
ルールに従い着信を自動転送
最初にSUTの導入により、具体的にどのようなことが可能になるのかを見ていこう。
まずはSametimeのクライアントソフト「Lotus Sametime Connectクライアント」からの電話発信で、内線にも外線にもかけられる。Sametimeは従来からプレゼンス機能を備えるが、SUTの導入により通話中かどうかも分かるようになる。Sametimeは「Lotus Notes」やWebアプリケーションなどに組み込めるため、これらのアプリからもPBX連携が利用可能。さらにマイクロソフトのOutlookやSharePoint等でも発信やプレゼンスなどの主な機能を利用できる。
Lotus Sametime Connectクライアントから電話をかけるところ。リストから電話をかけたい相手を選び、「コール」を選択する。もちろん電話番号入力で、発信することも可能。名前の左横にある受話器のアイコンは「通話中」を示す |
通話に使える電話機は、Connectクライアント上で動くソフトフォンのほか、携帯電話やPBXにつながった固定電話機だ。どの端末を使うかは、ユーザーが状況に応じて選択する。
どの電話機に着信させるかも指定できる。例えば外出時にConnectクライアント上で「コンピュータ」から「携帯」と切り替えれば、ソフトフォンではなく携帯電話に着信させられる。さらに設定したルールに従い、着信を自動転送させることも可能だ。同社ソフトウェア開発研究所Lotusテクノロジー開発の小峯宏秋氏が紹介するのは例えばこんな使い方である。
午前9時から午後5時までの間で、Sametimeにログインしてオンラインであればソフトフォンで電話を受けるが、オフラインや離席中なら会社支給の携帯で受ける。午後5時以降は、すべてボイスメールに転送するが、特定の顧客からの電話だけはプライベートの携帯に転送する――。
ソフトフォンで応答しなかったら、会社支給の携帯に、それでも応答しなかったらアシスタントの電話番号に、といったように着信を順次転送させていくこともできるという。
電話が鳴ったが、すぐに出かけなければいけない――。そんなときなどに役立つのが、写真の機能。鳴った電話を、指定した電話機に着信させられる |
こうした着信転送は、SUTユーザーに割り当てる電話番号「ユニファイド・ナンバー」により実現されている。ユニファイド・ナンバーは、外部に公開する唯一の電話番号となるもので、発信時にも使われる。SUTがユニファイド・ナンバーで着信を受け、それから設定されたルールなどに従って転送しているのだ。
ユーザーの状態や時刻、発信者の情報をもとに転送ルールを設定し、着信を自動転送できるSUT。写真は、その転送ルールの設定画面 |