インターネットを“裏方”として支えるCDN(コンテンツ デリバリー ネットワーク)が誕生してから、およそ20年余り。Webサイト表示の高速化を目的に普及が始まったこの仕組みは現在、インターネット上で行われるあらゆる活動の“快適さ”を担保するために不可欠なプラットフォームとなっている。
これをリードしてきたのが、1998年設立の米Akamai Technologiesだ。同社のプラットフォームは現在、134カ国・822都市に35万台のエッジサーバーを分散配置するまでに拡大。その基盤上で膨大なWebトラフィックが日々配信されている。
このCDNとは、どんな仕組みなのか。そして、Web高速化技術はどこまで進化しているのか。
2022年8月24日、この疑問に応えるオンラインセミナーを日本法人アカマイ・テクノロジーズが開催した。その内容から、エッジコンピューティングへの応用も始まっているCDNの最新動向について紹介しよう。
CDNについて解説したアカマイ・テクノロジーズ
プロダクト・マーケティング・マネージャーの中西一博氏
“実は速くない”インターネット
Webサイトの表示やコンテンツ配信を高速化するために、CDNが行っていることは大きく3つある。(1)コンテンツをエンドユーザーの近くに置くこと、(2)分散配置したサーバーからコンテンツを配信することで、処理を集中させないこと、(3)混雑しやすいポイントを回避することだ。
通常のインターネットルーティング(左)とCDNの比較
これがなぜ必要なのかと言えば、「インターネットは実は速くない」からである。アカマイ プロダクト・マーケティング・マネージャーの中西一博によれば、「インターネットのルーティングは必ずしも効率的なルートを選択しない。大回りしてしまうことで、パケットロスや遅延、輻輳が起こるし、品質が落ちたとしてもルートを変更することがない」。CDNは、こうした諸問題を解決するために開発されたものだ。
CDNの最も基本的な仕組みが、下図表の「ダイナミック・マッピング」である。
ダイナミック・マッピングの仕組み
Webサイトを見に行こうとするユーザーのリクエストに対して、オリジナルのコンテンツがあるWebサーバー(オリジンサーバー)ではなく、ユーザーの最寄りのエッジサーバーを指定。このエッジサーバーに、リクエストされたコンテンツをキャッシュし、そこからユーザーへと配信する。キャッシュが残っている間は、他のユーザーに対しても高速に応答することができる。
この仕組みはエンドユーザーだけでなく、ISPやコンテンツ事業者にとってもメリットが大きい。オリジンサーバーへのアクセスを削減したり、中継回線のトラフィックを減らすことができるからだ。
さらにアカマイのCDNでは、アクセスルートの最適化も行っている。「SureRoute」と呼ぶ機能だ。
「エッジサーバーは常に、オリジンサーバーとの中継ルートを3つ保持し、比較・評価して最適なルートを選択している」と中西氏。回線/ルートに障害が発生した場合には自動的に迂回ルートを探すことで、安定化を図っている。このルート最適化によって、キャッシュできないコンテンツの配信・表示も高速化できる。
SureRouteの仕組み
さて、ここまでが「CDNの基本」だが、アカマイではこの他にも様々な機能を実装している。中西氏によれば「単にWebキャッシュを使うだけでは、ユーザーは満足しない」のが現状だ。そこで、「機械学習を使ってTCPの最適化、配信画像やスクリプトの高速化など様々な技術を適用している」。
なかでも好評を博しているソリューションが「Image & Video Manager」だという。電子書籍サービス「eBookJapan」を運営するイーブックイニシアティブジャパンやANAが採用している。