「Beyond 5G推進コンソーシアム」は3月、Open RAN推進分科会を新設した。オープンな基地局の世界的な普及・展開を促進するのが目的だ。
オープン化の推進は総務省「Beyond 5G推進戦略~6Gへのロードマップ~」にも盛り込まれており、各ベンダーの基地局装置(RU/DU/CU)の相互接続性を検証するテストベッド「日本版OTIC」の構築が検討されている。また、オープンRANを推進する業界団体「O-RAN ALLIANCE」の設立メンバーであるNTTドコモは、海外キャリアが遠隔から仮想化基地局(vRAN)の検証を行える「シェアドオープンラボ」の提供を開始した。このように、国内外の通信事業者がオープンRANを採用しやすい環境も整いつつある。
オープンRANの最大のメリットは、これまで特定のベンダーに縛られていた「ベンダーロックイン」から解放されることだ。これにより、ベンダーごとの強みを活かした機器構成が可能となる。
加えて、特定の国やベンダーに依存しないことはサプライチェーンリスクの回避につながるため、経済安全保障の観点からオープンRANのメリットを捉える向きも少なくない。
2021年9月に開催された日米豪印首脳会議(クアッド)では、各部会で得られた成果を公表する文書の中に、「安全・開放的・透明な5G及びBeyond 5Gネットワークの整備を進めるとともに、様々なパートナーと協働してイノベーションを促進し、信頼に値するベンダーの発展やオープンRANのような取組を推進する」という文言が盛り込まれた。
クアッドに参加している4カ国のうち、とりわけオープンRANに積極的とされるのが米国だが、背景には経済安全保障というよりも、むしろ通信ベンダーの現在の勢力図が影響している、との見方もある。
というのも、長らくノキア、エリクソン、ファーウェイの3社による寡占状態が続いており、米国企業の名前が見当たらないからだが、オープン化・仮想化の進展とともに、ソフトウェアに強いマベニアやアルティオスターといった米国の新興ベンダーの存在感が高まっている。「オープンRANは現状にくさびを打ち込むものであり、米国としては自国の新興ベンダーを推したいのではないか」と総務省関係者は話す。