超高速で低遅延、しかも多数の端末を収容できる手段として、5G(第5世代移動通信システム)がいよいよ普及してきた。そして、同じ技術をオフィスや工場、公共施設などの特定の建物内や敷地内で活用するローカル5Gは、これまでワイヤレスで接続できなかった生産ラインやプラントを構成するさまざまな設備やセンサーをネットワークで結び、多くのデータを収集・分析することで、生産効率の向上や故障の検出、人手不足の中での技能継承といった課題を解決する手段として注目されている。
一方で、主にIT機器の接続などで活用されてきた無線LAN技術も進化を遂げ、「Wi-Fi 6E」という新世代の製品が登場しつつある。新たな周波数帯を利用でき、これまで以上に高速なワイヤレス通信を実現するとして期待される技術だ。
ローカル5GとWi-Fi 6Eという2つの技術は、「どちらを選ぶか」といった観点から比較されることが多い。だが正解は「適材適所で選ぶこと」だとシスコは考えている。 シスコ サービスプロバイダーアーキテクチャ事業 サービスプロバイダーモバイル本部 プロダクトセールススペシャリストの小林智典氏はこう説明する。 「1つの無線技術ですべてをカバーできるものではありません。さまざまな無線技術の中から、コストや機器のサイズ、カバレッジなどを検討しながら選択していくのが今の最適解です」
シスコ サービスプロバイダーアーキテクチャ事業 サービスプロバイダーモバイル本部
プロダクトセールススペシャリスト 小林智典氏
ITの黎明期からイーサネットによる有線LAN、そしてIEEE802.11bなどの無線LAN技術を提供し、企業ネットワークを支えてきたシスコでは、ローカル5GもWi-Fi 6E企業ネットワークを構成する重要な要素の1つととらえ、統合的なソリューションの中で提供していく。
既存ネットワークと同様の制御・管理が可能なローカル5Gソリューション ローカル5Gの実現に向けさまざまなソリューションが提案される中、シスコは既存の企業ネットワークと統合可能なローカル5Gソリューションとして「Cisco Private 5G」を発表している。無線基地局と5Gのエッジコア、そしてクラウドベースでインフラの監視や加入者・端末の管理を行える管理機能を統合したシステムだ。「as a Service」として、基地局、もしくは端末の台数に基づくサブスクリプション型で提供されるため、小さく始め、大きく育てていくことができる。
最大の特徴は、既存の企業ネットワークとの統合が容易なことだ。ポリシー管理ソリューション「Cisco Identity Services Engine(ISE)」によって、有線ネットワークにもまたがる形で、アイデンティティに基づく一元的な制御が可能なほか、セキュリティソリューションの「Cisco Umbrella」によってセキュリティポリシーも統合できる。「これまで企業ネットワークで展開してきた強みを生かし、新しくローカル5Gだけのネットワークを作るのではなく、既存ネットワークに展開できる形で製品を提供していきます」(小林氏)
既存の企業ネットワークとの統合管理が可能なシスコのローカル5Gソリューション
また、旧Jasperが提供してきたIoTプラットフォーム「Cisco IoT Control Center」も活用できる。2億台以上のデバイスを管理してきた実績のあるプラットフォームを用いて、SIMや端末の管理、時系列のイベント表示など詳しい情報を把握しながら適切に管理を行うことが可能だ。
「シスコはCatalystをはじめ、ID管理を実現するISE、セキュリティ管理を行うUmbrella、ネットワーク運用監視を行うCisco DNA Centerやフルスタックオブザーバビリティを実現するThousandEyesなど、企業のネットワーク全体をカバーできる製品群を取りそろえてきました。これらをローカル5Gと組み合わせることにより、進化した企業ネットワークをお届けできます」(小林氏)