地域だからできるデジタル化――国際展開に値する地域情報化の実例をまず作る必要もあるかと思いますが、現状はスマートシティをはじめ、海外の方が先進事例は多いようにも見えます。
三友 中国は新型コロナウイルスの感染拡大の管理に成功しましたが、その陰にはあるアプリがありました。深センに出入りする人を管理するために元々作られたアプリが全国各地に広がったのですね。それと同時に国の方では、各地域のデータを一括管理するプラットフォームを作り、そのプラットフォーム上に各地域のアプリが乗りました。
中国の場合、市民に強制するところもあったわけですが、市民にもアプリを使うメリットはありました。デパートに入るとき、電車に乗るときなどに、そのアプリを通行手形のように使えたのです。自分は「濃厚接触していない」とすぐ分かり、市民に安心安全を提供しました。
日本にもCOCOAという接触確認アプリがありますが、COCOAはあまりにもプライバシーを気にし過ぎました。アプリのインストールも、陽性者登録するかも自由意志です。そのため、日本の陽性者数は2月19日時点で累計約40万人ですが、このうち1万人ほど、比率にして2.57%しかCOCOAで陽性者登録していません。残り97.43%の陽性者がアプリの網にかからないのですから、機能するはずがありません。
COCOAと同じく、個人情報を把握しないグーグル/アップルのAPIを利用した国は結構あります。しかし、AFP通信のコロナ対応ランキングの上位10位内に、グーグル/アップルのAPIを利用した国は1つも入っていません。
――プライバシーの問題をどうするかは、データ駆動社会の実現に向けて大きな課題ですね。
三友 日本の問題は、公益のために正しくデータを活用するためのコンセンサスがまだできていないことです。その一因としては、政府に対する信頼のなさもあるかもしれません。
データ駆動社会においてデータプラットフォームは決定的に重要ですが、その上で大事なのは人々の信頼(トラスト)です。トラストはデータ駆動社会において非常に大切なキーワードになるでしょう。
私が地域に期待するのは、地域にはそうしたトラストが残っているからです。
COCOAに関しても全国展開せず、中国のように地域ごとに活用していたら、もっとうまくいったと考えています。例えば、信頼ある首長が「みんなでアプリを導入して、地域の安心を守ろう」と呼びかけ、地域一丸となって取り組めば、感染者が出たときに追跡調査しなくても、アプリだけで濃厚接触者がかなり分かるわけです。
――地域でやるからこそ可能なデジタル化があるわけですね。
三友 地域にまだ残っているコミュニティ、人と人の目に見えないつながりとICTが上手に結び付くと、いろいろなことが実現できると私は思っています。