Self-Driving Networkの実現方法とは
運用自動化はどのようにして実現されるのか。
ネットワーク運用の自動化はすでに実現可能な技術であり、
キャリアやクラウドでは十分な使用実績があるという
和久利氏は、「シンプル化と抽象化が自動化への近道」だと話した。自動化を進めるうえではIT/ネットワークシステムの複雑性が大きな障害となるため、その解消にまず取り組むべきだという。
ジュニパーがエンタープライズ向けソリューションのビジョンとして掲げる「Engineering Simplicity」では、見える化をその第一ステップに位置づけている。ネットワークで何が起きているのかを見える化し、対応を自動化することで運用効率を改善。同時に、セキュリティを高めることにもつながる。
AIを活用してこの可視化とアクションを自動化するにあたっては、AIの特性を理解することも重要だと和久利氏は指摘した。「AIは運用自動化の手法の1つでしかない。大量のデータを処理する、一見似ていても実は異なるものを分類・区別することは人間は不得意。そこをAIで補う」のだ。人間とAIで得意な役割を分担することが、効果的に自動化を導入するうえでのポイントとなる。
ジュニパーが掲げる「エンタープライズネットワークが目指す姿」
このAI・自動化を軸に、ジュニパーは上図のような「エンタープライズネットワークが目指す姿」を掲げている。主要な要素は次の4つだ。ユーザーから連絡を受ける前に異常を検知・復旧できること。機器ごとにログインして運用するのではなく、ネットワーク全体を一元的に運用できること。コアからエッジまでシンプルに機器選定ができること。そして、「ファイアウォールだけでなく、ルーターやスイッチ、Wi-Fiアクセスポイントとあらゆる部分でセキュリティ脅威を防御できる」(和久利氏)ことだ。
こうした要素を実現するため、ジュニパーは「Mist AI」でネットワーク全体を運用管理できる仕組みを用意している。有線と無線の区別なく、Mist AIがネットワーク内で発生する異常を検知し、対処法を提案することで管理者の負担を軽減する。現状は、「対処法の提案」に留まっているが、将来的に対処の自動化まで目指すという。
また、従来は企業内のLANがMist AIの管理対象であったが、現在では、ルーター/スイッチやWi-Fiアクセスポイント、SD-WANやセキュリティ機能を搭載するCPE(宅内通信装置)を統合管理するソフトウェア「Contrail Service Orchestration(CSO)」を使うことで、WANにおいてもAIによる自動運用が可能になっている。データセンターネットワーク向けの製品にもMist AIによる管理を適用していくという。
異常検知・原因解析などを行うMist AIを、
LAN/WAN、データセンターネットワークに適用する
このように、ジュニパーは企業LAN、WAN、そしてデータセンターネットワークとポートフォリオ全体でAIによる運用自動化を推進することで、ネットワーク運用にかかる時間とコストの削減を支援している。ITコストの大部分を占める運用コストを削減できるうえ、「IT管理者に時間的な余裕が生まれる。働き方改革の視点での改善もできるし、より創造的な業務ができるようになる」と、多面的な効果が期待できることを和久利氏は強調した。