「5Gスマホの国内出荷台数自体は、実は想定よりも良かった。ベンダーとしてはもっと売りたかっただろうが、コロナがあったにもかかわらずキャリアは調達台数を変えずに頑張ったと思う」。こう話すのはIDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの菅原啓氏だ。世間では思ったほど普及が進んでいないという見方もあるが、「最初だからこんなもの。逆に初めからロケットスタートしていても市場としておかしい」と見る。
IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリスト 菅原啓氏
富士キメラ総研 第三部 第二課 主任の加藤健二氏は「Android端末はこの下半期に、ハイエンドだけではなくミドルレンジの5G対応端末が出てくる。iPhoneも5G対応版を出す。マスのユーザーは『5G端末を使ってみよう』というよりは、『新しい端末に買い替えよう』という動機の人たちが多いため、こうしたマス向け端末の登場で普及に弾みがつくだろう」と話す。
矢野経済研究所によれば、国内MNO4社の2020年度5Gサービスの累計契約数は1185万契約の見通し。2020年の5Gスマートフォンの国内出荷台数(メーカー出荷ベース)は1333万台になると予測している(この予測では新型コロナウイルスの影響は考慮していない)。
2020年度下期以降に需要の回復は期待できるが、新型コロナウイルスの影響による上期の落ち込みをカバーするには至らない見込みで、サービス初年度の契約数は当初予測を2割強下回る可能性もあるという。2021年度には、サービスエリア拡大がさらに進むと同時に、MVNO事業者による5G商用サービス開始も期待でき、また延期となった東京オリンピック・パラリンピック開催も控えていることから、キャリア各社のサービス競争による盛り上がりも期待できることで、2021年度の5Gサービス契約数は3210万契約、2021年の5Gスマートフォン国内出荷台数は2230万台になると予測する。
グローバルでは、エリクソンが2020年6月に発表した『エリクソンモビリティレポート』によれば、75社超の通信事業者が商用5Gサービスの開始を発表しており、2020年末までの5G加入契約数は1億9000万件に達する予測だ。中国での加入契約の立ち上がりが以前の予想よりも早かったが、世界の他の地域に関してはパンデミックの影響を考慮してわずかな下方調整を行ったという。
図表1 無線方式ごとのモバイル加入契約数(単位:10億)
予測期間全体においては、2009年のLTE開始当時よりも大幅に早くなることが予想されている。中国の5Gへの取り組みが4G(LTE)当時より早かったこと、複数のベンダーがより早い段階で対応デバイスを準備していることが主な要因だとしている。2025年末までには、全世界での5G加入契約数が28億件に達すると予測されており、これはその時点のモバイル加入契約全体の約30%に相当する。