WAN高速化装置の主要ベンダーは、ブルーコートシステムズ、リバーベッドテクノロジー、ジュニパーネットワークス、シスコシステムズの4社だ。調査会社によりシェアの順位は変わっているが、この4社で国内シェアのほとんどを占めている。
前編ではWAN高速化装置の導入検討時のポイントなどを解説したが、この後編ではこの4ベンダーの製品の特徴を見ていくことにする。各社は4つの基本機能について、それぞれ独自の切り口でWAN高速化へのアプローチを実施し、優位性、差別化のポイントを打ち出している。
ブルーコートシステムズ――Web画面をキャッシュ化
ブルーコートシステムズは「ProxySGシリーズ」「ProxyAVシリーズ」の2シリーズをラインナップしている。
ブルーコートシステムズの「ProxySG9000」 |
各モデルは同じOSで動作するので、同じ機能が使える。このためユーザーが接続するPC台数や契約している回線の帯域から的確なモデルを選択するだけという作りになっているという。
同社は「MACH5」と呼ぶ5つのWAN最適化機能を同時に適用して効果を最大限に得られるアーキテクチャを採用している。
5つの機能のうち、「帯域幅管理」「圧縮」「バイトキャッシング」「プロトコル最適化」の4つは、前編で解説したWAN高速化装置の基本機能だが、5つめの「オブジェクトキャッシング」が同社の特徴的な機能だ。SEディレクターの小林岳夫氏によれば、「一番ユニークかつ一番効果を得られる機能であり、他社はサポートしていない」という。
オブジェクトキャッシングは、アプリケーションレベルで行う処理である。適用できるアプリは、CIFS、HTTP、MAPI、RTSP、MMS、SSL、FTPだ。
現在、多くの企業が支社・支店からのインターネットアクセス時も、本社までのイントラネットを経由する。このため、イントラネットの回線がインターネット利用だけで埋まってしまう可能性がある。問題を解消するためにはイントラネットの帯域を太くする必要があるが、コスト高は避けられない。
オブジェクトキャッシングを利用すれば、支店の社員がWebページを閲覧すると、そのページが丸ごと支店側のProxySGシリーズに保存される。その後他の社員が同じWebページにアクセスすると、装置にキャッシュされたWebページが表示される仕組みで、2回目以降同じWebページにアクセスする場合はイントラネット区間以降の通信はまったく発生しないために、インターネットに出て行くための帯域占有率を限りなくゼロにできる(図表3)。つまり、繰り返し使用されるファイルをキャッシュとして保存するため、帯域幅と遅延を減少させることができるというわけだ。
図表3 ブルーコートシステムズのオブジェクトキャッシング |
基本の技術についても少し触れておこう。帯域幅管理について小林ディレクターは「高速化ばかりではなく、高速化しない通信についても品質を守ることが重要」と語る。同社の技術を使えば、高速化しない通信の品質を守ることができる。高速化を積極的にやると、浮いた帯域を高速化した通信だけが契約帯域のギリギリまで使おうとする。その結果、他の通信が圧迫されてしまう。例えば音声系や画像をともなう通信等だ。特に音声に影響を与えてしまうと、大きな問題になる。そこで、同社の帯域幅管理機能では、これらの通信の帯域確保をしっかりやり、処理優先度を付けるようにしている。また、日中と夜間とで優先通信のポリシールールを変えることもできる。