近年、企業ではサーバーを1カ所に統合したいというニーズが高まっている。従来は、企業の支社や支店にも中小規模のファイルサーバーやアプリケーションサーバーが設置されていた。だが、サーバーのコスト高、情報漏えいの危険性大、運用に手間がかかるといった問題があるたため、景気低迷・ICTコストカットの動きのなかで、次第にサーバーを本社側に集約する傾向が強くなっている。
サーバー集約の1つの形として、本社のサーバーをマネジドデータセンターにアウトソースしようという動きが出てきた。さらにインターネット上にデータセンター的な役目を移行させようということで、クラウド/ SaaS等のサービスに移行する企業が増えてきた。
そこで、従来は各拠点の中小規模サーバーとクライアントとの通信で済んでいたものが、WANやインターネットを経由した形でサーバーアプリケーションを利用するといった形態が一般的になってきた。
そうなるとまず、セキュリティの問題が発生する。インターネットを経由する場合もあるし、WANも専用線であったとしても、傍受の危険性があるという。
また、WANには必ず距離に比例する遅延が発生する。遅延の影響を受けやすいアプリケーションは多いので実効速度が低下し、生産性が低下するという問題も浮き彫りになってきた。さらにWANの使用帯域も増えてきて、いくら回線を太くしても増大するトラフィック量に追いつかなくなってきた。
まず使用帯域と遅延を確認
こうした背景から、2005年頃に登場したのが「WAN高速化装置」である。同装置は文字通り、WAN部分のスループットをプロトコルの最適化やデータの圧縮技術等を用いて向上させる機器だ。
WAN高速化装置は、WANを介してデータをやり取りする拠点に設置するだけでよく、回線の契約帯域を増やす必要はない。
WAN高速化を検討する時はまず、現状のネットワークでの帯域と遅延の確認が必要だ。また、現在利用しているアプリケーションを整理し、高速化が可能かどうかを確認する(図表1)。
図表1 WAN高速化検討時のポイント |
図表2にWAN高速化装置の導入効果のイメージを示した。前述の距離による遅延と、遅延の影響を受けやすいアプリケーションがよく分かる。
図表2 WAN高速化装置の導入効果イメージ |
ただし、WAN高速化装置は万能ではない。効果が得られるのは、帯域が狭く遅延が大きいWAN環境で、FTPやファイル共有などのプロトコルで一度に大容量のデータを送受信するような場合に限られる。
広帯域で遅延がほとんどない環境で、非常に小さいデータを大量にやり取りする時には効果が得られない。ウィンドウサイズを広げられないうえ、キャッシュ効果が期待できず、アプリケーションのやり取りをWAN高速化装置で代理できないからだ。映像などの共通性がないデータについてもキャッシュによる高速化効果が得られないので注意が必要だ。