ラグビーW杯や東京オリンピック・パラリンピックなどの大型国際イベントを控え、世界からの関心が高まる日本。その中にはサイバー犯罪者もいる。こうした国際イベントは、サイバー犯罪者が力を誇示できる格好の舞台だからだ。日本は今、世界中のサイバー犯罪者から標的にされやすい状況にある。
DDosは“分かりやすい”こうした背景から、DDoS攻撃も増加している。ネットスカウトシステムズの調査では、2018年にDDoS攻撃を受けたと回答した企業の割合は34%と、2017年の17%から倍増している(図表1)。件数ベースでも2017年から約1.5倍増加している。
図表1 2018年の日本と世界の脅威状況比較
回線やサーバーのリソースを埋め尽くし、サービスを停止に追い込むDDoS攻撃は被害が分かりやすい。そこでサイバー犯罪者からすると、金銭目的だけではなく、政治的なプロパガンダ(宣伝)や個人的な恨みなどの目的を達成するのにも適している。
「例えば、金融機関のシステムを停止することができれば、ニュースになりやすい」(アカマイ・テクノロジーズ Web&Securityマーケティング本部 プロダクト・マーケティング・マネージャーの中西一博氏)。安価なDDoS攻撃代行サービスも市場に出回っており、今ではDDoS攻撃は容易に実行できる。なかには国家から支援を受けていると思われるハッカー集団も存在し、そうしたグループは自国のプロパカンダも兼ねて敵対する国家を攻撃する。
特に、オリンピックは最高の機会の1つだ。DDoS攻撃に限らず、様々なサイバー攻撃が仕掛けられる。2018年に開催された平昌オリンピックでは、開会式直後からトラブルに見舞われた。オリンピック組織委員会が所有するサーバー50台と、オリンピック関連企業の持つサーバー250台が何らかの形で破壊されたのである。
中西氏は次のように警鐘を鳴らす。「スポンサー企業も狙われるだろう。スポンサーでなくとも、世界的に有名なブランドを持っている企業、オリンピック団体の下部組織、地方自治体なども標的になる。攻撃者の意図は結局、日本を何らかの理由で『ぎゃふん』と言わせたいということ。最初のターゲットへの攻撃を失敗したら、違うターゲットへ切り替えるだけだ」