映像による臨場感のあるコミュニケーションを実現する遠隔会議システムは、カメラやマイクスピーカーが一体化した本格的なテレビ会議システム(ハードタイプ)と、PCやスマートフォンなどにダウンロードして利用するWeb会議システム(クラウドサービス)に大別される。
調査会社シード・プランニングによると、2017年のビジュアルコミュニケーション(VC)市場は、ハードタイプが47.0%、クラウドサービスが53.0%だった。今後もクラウドサービスがハードタイプを上回るペースで成長し、市場全体では2017年の497億円から2020年には680億円まで拡大すると予測する(図表1、2)。
図表1 2017年広義VC市場
図表2 広義VC市場規模予測
同社リサーチ&コンサルティング部エレクトロニクス・ITチーム 2Gリーダ主任研究員の原健二氏は「特に担当者レベルでは、クラウドサービスの中でもビジネスアプリの会議機能を使ったミーティングが増えている」と指摘する。
ビジネスアプリの代表例が、「Microsoft Skype for Business」だ。企業の規模や業種を問わず、「Microsoft Office 365」の採用が進んでおり、その機能の一部であるSkype for Businessへの関心も高まっている。
会議システムの販売や保守・運用サービスを手がけるVTVジャパンは、自社のWebサイトでSkype for Businessに関するコンテンツを強化しており、多くのページビューを獲得している。また、Skype For Businessに関するセミナーを定期的に開催しているが、毎回盛況だという。同社代表取締役の栢野正典氏は「既存のテレビ会議システムとSkype for Businessを融合させたコミュニケーションを検討中で、そのために情報を収集している企業が多いのではないか」と見る。
金融や遠隔医療に用途が拡大クラウドサービスの普及やネットワークの進化、端末の多様化など技術的な変化に加えて、市場環境の変化も遠隔会議の需要を押し上げている。
1つめに、金融や不動産など、これまで対面での対応が義務付けられてきた分野で法改正が始まっており、会議システムの活用シーンが広がりつつある。
また医療では、情報通信機器を通じて医師が患者の診察を行い、診断結果の伝達や処方等の診療行為をリアルタイムに行うオンライン診療が今年度から保険診療として認められた。診療報酬の要件が厳しいという制約はあるが、過疎地などにおける医師不足の課題解決に役立つことから、今後の普及が見込まれる。
2つめは、「働き方改革」の広まりだ。
従来はテロやSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行、経費削減による海外出張の取りやめという“後ろ向きの動機”が中心だった。それがこの1~2年は、働き方改革という“前向きな動機”に変化している。「働き方改革が導入のきっかけや目的、問い合わせ理由の9割以上を占める」(Web会議ベンダー関係者)という声も聞かれるほどだ。
働き方改革を目的とした導入の場合、自宅や外出先などオフィス以外の場所で働く社員がミーティングに参加できるようにするのはもちろんだが、最近の傾向として、取引先やパートナーなど社外の関係者との打ち合わせに活用するケースが目立つ。
製品開発を例に取ると、サンプル品の打ち合わせのために関係者全員の予定を調整していると、数週間先になってしまうこともある。それがWeb会議システムなどを使えばすぐに始められ、開発スピードに大きな差が生まれる。余分な移動時間の削減だけでなく、業務のスピードアップをもたらすことができるというわけだ。