説明会ではまず、ノキアでグローバルエンタープライズ担当シニアバイスプレジデントを務めるクリス・ジョンソン氏が世界市場での取り組みを紹介した。
ジョンソン氏はノキアのエンタープライズ向け事業について、「公共、エネルギー、運輸、大企業(金融、ヘルスケア、自動車、小売/物流)、ウェブサービスの5つのセクターに分けて、世界7つのエリアでビジネスを展開している」と説明。そのうえ、なかでも日本は「非常に重要なマーケットだ」と強調した。
営業活動においては「パートナーを第一に考えている」とし、特に産業向けシステムのインテグレーションを手がける企業との関係を重視しているという。
続いて演壇に立ったのは、ノキアの日本法人で執行役員 エネルギー・運輸・公共事業部 事業部長を務める奥田浩一郎氏だ。同氏は、LTEを企業が自営網として利用できるようにした「プライベートLTE」を中心に、ノキアがエンタープライズ分野で手がけてきた事例を紹介した。
ノキアソリューションズ&ネットワークス 執行役員
エネルギー・運輸・公共事業部 事業部長 奥田浩一郎氏
その1つ、資源メジャーのリオ・ティント(Rio Tinto)のケースはオーストラリアの大規模鉱山にプライベートLTEの設備を構築し、トラックの自動運転や重機の遠隔操作に利用しているもの。これにより作業の安全性向上と同時に大幅な人件費の削減が可能になったという。
遠距離でも安定した大容量通信が行えるLTEの特性を生かした事例で、奥田氏は「日本でも海外で鉱山の権益を持っている会社や、海外に重機を売っているメーカー・商社などから、驚くほど多くの問い合わせが来ている」と明かした。
この他にも、プライベートLTEを活用した事例として、カリフォルニアで多数の風力発電所を展開している電力会社Sempra Energyの電力制御システム、米国FirstNetによる全米へのパブリックセーフティネットワークの構築、パリ市メトロ交通公団(RATP)による監視カメラと運行管理システムなどを統合した新システムなどが紹介された。
奥田氏は、これらに共通する特徴として「有線側にIP/MPLS、無線側にプライベートLTEを用い、制御系と情報系の統合を実現している」点があるとし、こうしたシステムの整備が「グローバル市場でのトレンドの1つになってきている」と説明した。
プライベートLTEは、通信事業者からエリア限定で周波数の権利を譲り受けるなど特別な手立てによって実現されているケースが多かったが、ここにきて3.5GHz帯を一般企業にも開放した米国のCBRSなど、利用しやすい枠組みも整備されてきている。ジョンソン氏によると「ポーランドなど、いくつかの国でプライベートLTEに新たに周波数を割り当てる動きが出てきている」という。奥田氏は「日本でも遠からず利用できるようになるのではないか」と予想する。
プライベートLTE以外には、LTEネットワークで制御や映像の伝送を行い、連続60分、航続距離で80kmの自律飛行を可能にしたドローンソリューション「Nokia Drone Networks」や、今年5月に買収した予防保全ソリューション「Space-Time Insight」などの、新たなソリューションの展開に力を入れているという。
ノキアが企業への展開に力を入れているソリューション[画像をクリックで拡大]
奥田氏は、日本でのエンタープライズ向けソリューションの普及に向け、(1)ベル研などで培った最先端の技術の提供、(2)世界市場での事例の紹介、(3)日本独自の要件への対応、(4)パートナー企業との連携、(5)ユーザーやパートナーの世界展開の支援という5つの指針を打ち出している。