小売店舗を取り巻く状況今回のテーマは「ITによる小売店舗の革新」です。ひとくちに小売店舗といっても、様々な種類があります。
まずは経済産業省がまとめた、2017年の業種別商業販売額を見てみましょう。
図表1 2017年の商業販売額
出所:http://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20180416minikeizai.html
小売業全体の2017年の販売額は142兆5140億円で、前年比1.9%増となっています。
経済状況が比較的安定していることもあり、小売業全体の売上は堅調に推移していますが、業種別に見れば、コンビニ・家電量販店・ドラッグストアなどが好調なのに対し、百貨店などは多少元気のない様子が数字に表れています。
ただし、上記の数値は「小売業の販売額」であって、「小売店舗の販売額」ではありません。
小売業の企業がネット通販(BtoC-EC)で販売した金額も含まれているのです。そこで、BtoC-ECのみの市場規模を見てみましょう。
図表2 2017年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模
出所:http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180425001/20180425001.html
図表2の通り、2017年の日本国内のBtoC-ECの市場規模は16.5兆円です。
金額的には、小売業販売額全体の10%強ですが、前年比9.1%増。2010年からですと、2倍以上と大きく伸長しています。
小売業全体の販売額は穏やかな推移ですから、実質、店舗での売上がネット通販に奪われつつある、ということでしょう。
小売店舗が不振となる理由なぜ、小売店舗の業績が奮わないのでしょうか? まず、現代の人々のライフスタイルの変化が挙げられます。
現代人は多忙です。よほどお気に入りの商品を選ぶのでもない限り、わざわざ店舗に出向くよりも、スマホやPCをクリックするだけで自宅まで届けてくれる通販のほうが支持されやすいのは自明です。
また、少子高齢化の影響も見過ごせません。買物弱者となった高齢者が通販を選ぶようになるのも当然の流れでしょう。
さらに、小売店舗は慢性的な労働者不足にも悩まされています。
店舗スタッフの仕事は「キツい」「辛い」などのイメージがあるからでしょうが、今後の生産年齢人口の減少により、店舗の労働力不足はさらに深刻なものになっていくはずです。
このような労働者不足は労務費の高騰を招きます。労務費だけではありません。店舗運営コスト全般が、通販では不要ですから、その分、小売店舗は高コスト体質である、と言えるのです。
改革に向けた2つの方向性それでは、小売店舗が競争力を取り戻すためには、どうすればよいのでしょうか。
まずは、通販では得られない、店舗ならではの顧客体験価値の最大化を実現する施策が求められます。さらに、労働力不足や店舗運営コストを低減する施策も必要でしょう。
「体験価値の最大化」と「省コストの徹底」、この一見相反する2つの方向性をAIやIoTの力を使って実現することが、小売店舗のイノベーションとなるでしょう。
ここでは、以下の4つの切り口で、小売店舗のイノベーションを実現している事例を紹介します。
・ロボットの活用
・無人店舗
・VRの活用
・ビッグデータ活用
※なお、リアル店舗の顧客価値を最大化する手法としてオムニチャネルがあります。オムニチャネルは、ネットとリアルをうまく連携・融合させて成果を上げていくものですが、今回の記事では、オムニチャネルは除き、あくまでリアル店舗自体で実施する手法について言及したいと思います。オムニチャネルについては、以前に書いた「リアル店舗の売上アップにつながる顧客体験をO2O/オムニチャネルで実現!」を参考にしてください。