キャリア網のホワイトボックス化へ前進――NTTと中華電信が日台共同SDN実験

NTTと中華電信が昨年末、キャリアインフラのマルチベンダー化を目指した共同実験を行った。ホワイトボックススイッチで構成するネットワークでキャリア品質の信頼性を実証。商用化へ弾みがつきそうだ。

汎用的な製品を使ってキャリア品質のネットワークを構築する――。そうした目的を掲げてNTTネットワークサービスシステム研究所(NS研)が開発を進めるIPネットワーク基盤技術「Multi-Service Fabric(MSF)」が実用化へ大きな一歩を踏み出した。

NTTとSDN/NFV分野で2015年から協業している台湾の通信事業者、中華電信と共同実験を実施。ホワイトボックススイッチを用いたネットワークを中華電信のデータセンター内に構築し、仮想ネットワークを構成・制御する技術の実証を行った。2017年11月から行われた2週間の実験で、キャリアで必要とされるレベルのサービス継続性と信頼性を実証したという(12月12日報道発表)。

NTTは昨年10月にMSFのコントローラーをオープンソースソフトウェアとして公開し、国内外の通信事業者・ベンダーと組んで早期の実用化を目指している。NS研のネットワーク伝送基盤プロジェクトIPフロー制御装置DPで主任研究員を務める入野仁志氏は、今回の実験の意義について「実績を積んでいくことで、MSFの採用に興味を持つ事業者は増えていくはず」と話す。
ホワイトボックス適用にフォーカスMSFの目的は、ネットワークインフラのマルチベンダー化にある。これまでのように、キャリア向け製品を提供するベンダー固有の技術・機能を搭載した専用装置に依存するのではなく、オープンな技術を採用してネットワーク装置の汎用化を進めるのが狙いだ。ベンダーロックインを無くして製品選択の自由度を高められるのに加えて、汎用製品を使うことで調達コストも下げられる。

そこでNS研では、標準技術に準拠した汎用スイッチ/サーバーや、OS/ソフトウェアを必要に応じて載せ替えられるホワイトボックススイッチでネットワークを構成し、それを「MSFコントローラ」から制御するマルチベンダー対応のSDNアーキテクチャの開発を進めてきた。図表1のように汎用的な装置・ソフトで構成されるリソースを組み合わせて、サービス事業者が要求する性能に応じたネットワークを提供できるようにする。

図表1 Multi-Service Fabric(MSF)の概要
図表1 Multi-Service Fabric(MSF)

このMSFの研究開発はこれまで、キャリア向け専用装置に比べて廉価な汎用スイッチを使って行われてきたが、今回の共同実験は、OSの載せ替えも可能なホワイトボックススイッチの適用にフォーカスした。「市中のホワイトボックス用OSの機能が充実してきたので、ようやくMSFに組み込めるようになった」と話すのは主任研究員の高橋賢氏だ。「製品選択の幅がかなり広がる」のがメリットだ。

なお、今回の中華電信との実験では市販のOSを利用したが、入野・高橋両氏のチームでは、ホワイトボックス用の独自OS「Beluganos」も開発し、オープンソースとして公開している。

月刊テレコミュニケーション2018年2月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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