5G普及の鍵はユースケース開拓に午後に行われたソフトバンク 技術統括 研究開発本部 本部長 國信健一郎氏の基調講演では、同社の「5G Project」の取り組みが紹介された。
國信氏は、5Gについて「総務省では2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてサービスを提供するとされているが、当社もそれに合わせて準備を進めている」と2020年の5Gの商用化に意欲を見せた。
ソフトバンク 技術統括 研究開発本部 本部長 國信健一郎氏 |
さらに、5Gの特徴について「モバイルブロードバンドの高速化に主眼を置いていた4Gに対し、5Gでは、超高速、超低遅延、多数同時接続とったあらゆる通信のニーズに対応することが求められる」とした上で、これを実現するには無線だけでなく、ネットワーク全体を高度化する必要がある」と指摘した。特に無線区間を専用道路的に使う「Massive MIMO」と、SDN/NFVを活用した「ネットワークスライシング」の2つの技術が重要になるという。
その上で國信氏は、5Gでは大きな技術の進化が見込まれ、実現には多少時間がかかることから、当面は4Gの能力の向上、5Gへのマイグレーションを円滑に進めることが重要になるとし、その具体化に向け設けられたのが「5G Project」であるとした5G Projectが第1弾として取り組んだのが今年9月の4GネットワークへのMassive MIMOの導入だという。
Massive MIMOは、電波に鋭い指向性を持たせるビームフォーミングを用いて、同じ周波数を使って複数の伝送路を設ける空間多重技術。最大通信速度は従来と同じだが、1基地局当たりのネットワーク容量を大幅に向上させることができる。ソフトバンクは、今回基地局側に128素子のアンテナを搭載することでネットワーク容量を10倍に向上させた。
國信氏は「今回導入したMassive MIMOはゴールではなく、5Gではさらに進化する」と述べる。具体的にはストリーム数の増加によるスループットの向上、超低遅延化によりビームの追従性の改善、さらには制御チャネル(共通チャネル)にもビームフォーミングを適用することにより屋内を含む到達エリアの拡大が図れるという。これにより長距離伝送が困難なミリ波、サブミリ波を移動通信で円滑に利用できるようになるのだ。
國信氏はさらに「5Gを将来広く使っていただく上ではユースケースの開拓が重要になる」と指摘、同社が検討しているいくつかユースケースを紹介した。
例えば、5Gの多数同時接続の特性を活かせば、スーパーで売っている商品全てにタグをつけておけば、販売管理だけでなく、消費者がスマートフォンをなどで冷蔵庫の中の食品の賞味期限の管理を行うようなことも可能になると國信氏は見る。超低遅延の特性を活かせば、高速道路などの長距離区間は自動運転し、地域の配送は人が運転して行うといった新しい物流の形態も実現できるという。ソフトバンクは自動運転の実現に向け、今年、ソフトバンクドライブを設立するなど5G時代に向けた準備を、着々と進めているという。