押し寄せるデジタル変革の波――新時代のビジネスにSDN/NFV、5G、AIをどう活かす

通信事業者のビジネスを支える最新技術・ソリューションをテーマにした専門イベント「第16回次世代ネットワーク&サービスコンファレンス」(主催・リックテレコム)が11月15日に開かれ、通信大手3社のR&D部門の責任者による講演が行われた。また、IoT、 NFV/SDN、5G、セキュリティなどをテーマとするベンダー8社によるセッションが行われ、参加者の関心が集まった。

SDN/NFVの運用に2つの解答今回のカンファレンスの最後を飾ったのが、KDDI総合研究所 執行役員 森田逸郎氏によるSDN/NFVの管理・運用をテーマとした基調講演である。

森田氏はKDDIが5Gで追求しているビジョンに「ユーザーセントリック(お客様中心主義)」の実現があると述べた。5Gによってユーザーの「ワクワクする体験」「産業振興・社会基盤・安全安心」を実現しようというのだ。

KDDI総合研究所 執行役員 森田逸郎氏
KDDI総合研究所 執行役員 森田逸郎氏

森田氏は、5G時代のネットワークには、①ダイナミックな役割分担、②ネットワーク能力の拡張、③最適なネットワーク提供という3つの技術面での進化が求められるという。①は端末情報処理やエッジコンピューティング、②は5Gによる超高速大容量化、超低遅延化など指している。今回の講演で森田氏が取り上げたのが、③の「最適なネットワーク」をSDN/NFVでどう実現するかである。

森田氏は、多様な顧客ニーズに対応するにはネットワークスライシングや高い柔軟性を実現できるSDN/NFVが不可欠だとしながらも、運用・管理の面では課題も残っていると見る。講演では森田氏がその解決策になると見る2つの技術開発の取り組みが報告された。

その1つが、マルチベンダー環境でのSDN/NFVの運用自動化だ。SDN/NFV環境は複数のベンダーのネットワーク機器やソフトウェアを組み合わせて構築されるため、従来とは異なる保守・管理手法が必要となる。そこでKDDI総合研究所ではオーケストレーターを自ら開発、マルチベンダー環境における障害時の自動復旧手順をモデル化し、2015年にベンダー各社と共同でトライアルを実施した。このモデルやオーケストレーターとの通信手順はTMForumやETSIに提案されている。森田氏は「従来のネットワークでは原因を特定して対策を講じる手法をとっているが、SDN/NFV環境では、まず直してしまい、その後で原因を特定する形に変わる」という。

もう1つのテーマが、SDN/NFVにおけるリアルタイム監視機能の実現だ。SDN/NFV環境に従来の網監視の手法をそのまま導入したのでは、監視データ量が膨大となりリアルタイムでの監視が難くなる。そこで、KDDI総合研究所では管理機能を分散型にすることでデータ処理時間を10分の1に短縮できる技術を開発、今年バルセロナで開かれたMWC2016で公開した。このシステムでは機械学習を用いて故障が発生する前に対処を行う「予防保全」も可能にするという。森田氏は「SDN/NFVは最適なネットワークの提供に不可欠な技術。さらに研究開発を進め、ユーザーセントリックなネットワークを実現していきたい」と意欲を見せた。

ベンダー各社のセッションでは、ノキアソリューションズ&ネットワークス、コントロン ジャパン、NEC、ウインドリバー、ファーウェイ・ジャパン、ジュニパーネットワークス、日本アルカテル・ルーセント(ノキアグループ)、トレンドマイクロが、それぞれの分野の最新の技術トレンドをテーマに講演を行った。

会場に設けられた展示ブースでは、ウインドリバー、コントロン ジャパン、ジュニパーネットワークス、トレンドマイクロ、ノキアソリューションズ&ネットワークスが、それぞれのソリューションを紹介し、説明員が来場者の熱心な質問に答えていた。

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