人工知能(AI)がプロ棋士に勝利した――。数日前、米グーグルの研究部門であるGoogle DeepMindが開発した囲碁AI「AlphaGo」が、韓国のプロ棋士に圧勝したという対決が話題になった。囲碁、チェス、将棋などの知能ゲームをめぐる人間と人工知能の対決は、多くの研究者たちを魅了している。
1950年代~の第1次、1980年代の第2次に続いて現在、第3次人工知能ブームが到来しているのだ。ただ、今回のブームには従来とは異なる点がある。それは、実用化に向けてしっかりと進み出している点だ。
なぜ今回は実用化が進んでいるのか。野村総合研究所(NRI)の古明地正俊氏によれば、そのポイントはディープラーニング(深層学習)にある。
ディープラーニングは人工知能が自分で学習する古明地氏は、「人工知能の中核技術はディープラーニング」と語る。
ディープラーニングは機械学習の手法の1つだ。機械学習とは学習能力をコンピュータに獲得させる手法・技術の総称で、従来の機械学習では“人間が特徴を定義”して人工知能に教えていたのに対し、今のディープラーニングでは”人工知能が学習データから特徴を抽出”する。
ディープラーニングでは人工知能が学習データから特徴を抽出する |
例えば、赤いリンゴと青リンゴを機械に見分けさせる際、従来の機械学習では、“赤いリンゴ”とタグ付けした赤いリンゴの画像データと“青リンゴ”とタグ付けした青りんごの画像データをそれぞれ人工知能に流し込むとともに、“色”という特徴に着目すれば識別できることを人間が人工知能に教え込んでいた。それに対してディープラーニングでは、「タグ付けした画像データを流し込むところまでは同じだが、そのあとは特に人間が定義する必要はない。どのような特徴に着目すれば識別できるかは、人工知能が自分で学んでいく」(古明地氏)
この例はリンゴのため、人間が特徴を定義することは簡単に思えるかもしれない。しかし、ライオンの子供とネコを見分けるような場合は、どの特徴に着目すればよいのか定義することは難しい。ネコにもペルシャ猫から三毛猫まで多様な種類がいるが、それらの違いを人間が定義するのは現実的ではなく、人工知能が自ら特徴を学ぶディープラーニングが強みを発揮するという。